山中思温

上智大学外国語学部ロシア語学科4年生
(ゼミは政治学:中国とロシアの情報統制を研究)

大学2年までは高校で進学指導のバイトと英語ディベートサークルに所属するくらい。
2年の終わりに、超ブラック企業でのインターンシップをきっかけに、絶対にきちんとした会社に入ろうと9社くらいのインターンシップに参加。

就活は最初は随分苦労し、政治家、経営者、と色々な人と意見交換をし、自分のやりたいことを突き詰め、また、人事、ヘッドハンター等から情報を得るようにしていたので、日本の就活のテクニックを学んで、大手・ベンチャーから内定を幾つか頂く。
しかし、結局ビジコン型の採用でミドルベンチャーへ。入社してすぐ事業を持たせてもらえるので、まずはそこで結果を出せるよう、多数のインターンやバイトで修業中。ただ、盲目に頑張りながらも 客観的に自分を捉えていきたいので、色々な組織やイベントに関わるよう心がけてます。
(2012年12月 新宿「就トモカフェ」にて)

外の声をあなたに

(清水宣晶:) 今日は、ちょっと、
いつもと違った形式になるんですけれど、
思温さんが僕にインタビューをしてくれるということなので、
その中で、僕も思温さんに話しを聞く、
っていうやり方にしましょうか。

(山中思温:) お互いにインタビュー、
みたいな感じですね。

そうそう、
そんな感じでいきましょう。
ソトコエ」っていうのは、
(※思温さんが運営する、海外ビジネスの面白さを伝えるサイト)
どういう意味でつけたネーミングなんでしょう。


「外の声をあなたに」っていうことを
テーマにしたいと思って、つけました。

海外に出ている人から、日本へのメッセージ、
っていうような意味ですか?

それもあるんですけど、
社会に出ている人から学生へ、とか、
社会の価値観の外側にいる人からの声、
っていうこともあります。

なるほど!
その視点は、面白いと思いますよ。
何か、「ソトコエ」で毎回聞いている、
メインテーマみたいなものはあるんでしょうか。

「グローバル人材になるには」っていうことも、
テーマの一つなんですけど、
この前、その内容でセミナーを開いた時、
そもそも「グローバル人材って何?」っていうツッコミが
ものすごく多くて。

うんうん。

その時に考えたんですけど、
自分が育った文化以外の場所でも活躍が出来れば、
それはグローバル人材って言えるじゃないか、って思ったんです。

それは、日本の国内にいても、
ってことですね。


そうですね、日本にいても
インド人の上司がいたり、中国人の部下がいたり、
自分と違う文化の人に囲まれた環境にいることも、
グローバルなのかなっていうふうには。

ああ、、なるほど。
ちょっとアウェー感を感じるような
場所っていうことですよね。

そう、そういうアウェーな場所でも、
活躍出来る人がグローバル人材なんじゃないかって。

価値観や文化背景が違う人と、
上手くコミュニケーションがとれるかっていうのは、
要素としてあるでしょうね。
僕、10代の頃、初めて外国に滞在した時、
全然会話が出来なくて、結構落ち込んだんです。
で、これは語学力だけの問題ではないなあと、
その時に思って。

はい。

たとえ自分がネイティブ並に英語がしゃべれたとしても、
話しが出来ないだろうなって、感じたんです。
そもそも自分の中に話すべき中身を持ってない、
って気づきました。

外国の人と話す時に、話せない感じって、
性格の違いもありますよね。
韓国人の人とかと話してると、
なんか、めっちゃ来るな、って思うんですよ(笑)。


ぶはははは!
何か怒ってるのか?
って思っちゃいますよね。

「それで、おまえはどう思ってるんだ」っていうのを、
すごく聞いてきたり。

日本の中で話しをしていると、
普通そこはあまり突っ込んで聞かない、みたいな部分を。

話の中でちょっと、
ロシア語学科でロシアの歴史や政治を勉強してます、
って言った瞬間に、ものすごい勢いで質問をされて、
戸惑ってしまって。
まず英語で伝えられる以前に、
私も、他人に伝えられるほど自分の考えが
まとまっていないなって感じたりしました。

うんうん。

そのおかげで、家に帰ってからもう一回勉強し直して、
文章にして伝えたんですけど。
日本人の子だと、「あ、そうなんだ」で終わりになるところが、
それで終わらないので。


そういうやりとりがあると、
自分の意見の無さとか、勉強不足に気づかされますよね。
それはでも、自分のためになる体験だって思います。

清水さんは、この先、日本がどうなっていく、
っていうイメージって、なにかお持ちですか?

思温さんの求める答えとはまったく逆になっちゃうかも
しれないんですけど、
僕は、あんまり日本がグローバル化してほしくないなあって
思ってるんですよ。

あ、なるほど。
それはすごく面白いです。

グローバル化することはいいことだ、
日本も世界にキャッチアップしなきゃ、って圧力がありますけど、
日本人て、グローバルにいくら近づこうとしても、
馴染み切れない部分があると思うんです。

実際そう思ってる方って多いんじゃないかと思います。
表向きには、欧米みたいに自分の意見を持って主張していく
っていうことが重要って言うと思うんですけど、
実際心の中では、日本人なんだから、うちに秘めた遠慮深さみたいのが
あっていいんじゃないかと私も思って。
どっちがいいかっていうのは、難しいですよね。

ワーって言われて、戸惑ったり、
自分を意見を言えないっていうことも含めて、
日本人の欠点でもあり、長所でもあって、
いいところどりは出来ないと思うので、
全員がムリして直さなくてもいいのかな、と。

ウチは、姪っ子と甥っ子はアメリカで育ってるんですけど、
幼稚園のお遊戯のビデオとかみると、全然違うんですよ。
みんな、揃えようっていう意識がまったくなくて、
一番上手い人のをまわりで見ながら、適当に踊ってる、っていう。
教育からして全然違うんだなって思いました。

小さい時の経験とか習慣ってのは、
やっぱり根っこの部分に染み付いてますよね。


日本の良さって、どういう時に感じますか?

財布や携帯を落とした時に返ってくる割合が、
日本って、ものすごく高いでしょう。
誰が届けてくれたかわからないけど、交番に届いてたりする。

そういうモラルって不思議ですよね。
特にそういう教育とか、宗教とかが
熱心にあるわけじゃないのに。

規律がテキスト化されてるわけじゃないですけど、
文化として伝わってるものがあるんでしょうね。
お遊戯で、みんなで動きを揃えるようにするとかを、
小さい時からやってるってことにも意味があるんだと思いますよ。
周りの空気を感じて、それに自然に合わせるって、
訓練が必要な身体感覚でしょう。

そうですね。

「自分を抑えてまわりに合わせる」っていうのも悪いことばかりじゃなくて。
だから、日本がアメリカの真似をする、っていう
グローバル化はしてほしくないと思うんです。

逆に、海外の人に、
日本人の良さも聞いてみたい気がしてきました。
そうしたら、どこから違いが生まれるか、
もっとわかるかもしれない。

それは僕も興味あります。
それも、まさに「ソトコエ」ですよね。

異文化と接する環境

価値観の違う人とのコミュニケーション能力って、
どうしたら身につくんでしょうね。

外国人とシェアハウスで住むのが、
一番いいんじゃないかと思います。
言葉の勉強だけを続けるっていうのはなかなか難しくて、
外国語をしゃべらざるを得ない状況に置かれて、
それに必要なことを学ぶっていう順番じゃないと、
身につかないんじゃないかと。

お金も節約できるし、
今、そういうシェアハウス結構ありますよね。

シェアハウスの数も、だいぶ多くなって、
昔よりもハードルはかなり下がってる感じはします。

AirBNB」って御存じですか?
個人提供の宿のマッチングサービスで、
どういう人が住んでるか、
facebookのプロフィールでわかる、っていう。

それ、すごくいいなあ。
カウチサーフィンみたいですね。

その類似版みたいなやつです。
日本ではまだそんなに登録がないんですけど。
ちょっと探してみましょうか。
清水さん、お住まいはどちらですか?

横浜の戸塚です。
鎌倉に近いから、観光客からの需要はあるかもしれない。


横浜でも、
結構登録してる人多いですね。

これは、泊める側も、泊まる側も、
どっちも面白いと思います。

ウチも、家の造りが
日本家屋なので、合ってるかもしれない。

僕、海外に行った時って、観光するよりも、
現地の生活が見たいんですよ。
その国の人たちはどういう家に住んで、
どういうものを食べているか、って。

ホームステイみたいな?

そこまでいかなくても、
ちょっと食事に呼ばれるとかでもいいんです。

じゃ、「AirBNB」はピッタリですね。
私も海外に行く時には使いたいって思ってるんです。

少し前、ネットが使える以前っていうのは、
異文化と接するためのコストって高かったと思うんですけど、
今は、日本にいても、仕事をしながらでも、
日本の外とコミュニケーションはいくらでも出来ますね。

こういうサービスが浸透していけば、
日本にいながら、異文化と接する環境は、
どんどん広がるんじゃないかと思います。

昔と比べて、すごく、
人と会いやすくなってますよね。


清水さんは、普段いろんな人に話を聞いてますけど、
それを海外でやってみるっていうのはどうですか?

それはすごく興味ありますよ。
「ヒトゴト」の海外編はやってみたいです。
思温さんは、海外に行くときって、
どういう過ごし方をするんですか?

今まで、純粋な旅行っていうのはあんまりなくて、
たいてい、何か目的があって行ってるんですよ。

ふらっと遊びに行くっていうんじゃないんですね。
誰かに会いに行ったりとか?

そう、あと、
この授業を見たいとか、インターンをしたい、とか。
アメリカに住んでいる兄の知り合いの、googleの人に
会社の中を案内してもらったり。

それはいいなあ。
僕、前にアポ無しでシリコンバレーのgoogleに行ったんですけど、
当然中に入れなくて。
ドアから人が出てくるタイミングを見計らって、
こう、親切にドアを抑えてあげるフリをして、
さりげなく入りました。

私の知り合いも、アポ無しで中に入ったみたいなんですけど、
社員証を首にかけてないから、途中で見つかったみたいで。
「お前は何者だ、ここでなにやってるんだ?」って聞かれて、
「I love google!」って言ったんですって。

ぶはははは!
会話になってない。

いちおう、
それで許されたみたいですけど(笑)。

海外の仕事環境

清水さんは、
海外に住んで仕事をしようって思ったことはありますか?

移住をしようとは考えたことないんですけど、
旅行よりは長いスパンで、あちこちに場所を変えて
滞在するっていうのはこれまでもやっていて、
この先も、続けていきたいって思ってます。

完全にノマドワーカーですね。
そんなに、パソコン一台で出来てしまう仕事なんですか?

打ち合わせが必要な時もありますけど、
それも、ほとんどはネット経由で出来てしまうことなので。


それじゃあ、ほんとに場所は関係ないですね。
今まで行った中で、どの国が働きやすいって思いました?

一番重要なことは、ネットにつながるかどうかで。
でも今は、それもだいぶ環境が整ってきましたね。

Wifiが使える場所が多くなったからですか?

今年(2012年)から、ドコモやソフトバンクで、
携帯のパケ放題が使える国がだいぶ増えたんですよ。
それで今年は、新しくパケ放題が使えるようになった国から
行き先を決めて、スロヴェニアに行ってきました。

へええ、スロヴェニア。

ネットさえ常時つながる環境なら、
もう、どこの国にいるかっていうことは、
あまり関係ないですね。

現地のことを、
レポートとして書いたら面白いんじゃないですか。
清水さんは普段、人の魅力的な部分を記事にしてますけど、
清水さん自身の生活のことも、とても面白いって思います。


そういう視点からの情報っていうのは
他の誰かの役にも立つかもしれないですね。

そういう生活スタイルを望んでいたり、
具体的な情報を必要としている人って、
すごく多いだろうと思います。

僕、海外でも日本でも、どこかに行くと、
最初にコンセントを探すんですよ。
どの席にあるかとか、使っていいのかとか。
新幹線じゃない、普通の電車の中でも、
目立たない場所のフタを開けると電源があったりして。

(笑)気にしたことなかったです。
それは、いつからやってることですか?

10年以上前からですね。
その頃は、海外ではネットにつながる環境を最優先にして、
ネットが使えるホテルをまず探して。

そんな手間をかけてまで、
そういう働き方をしたいって思ったのはなんでなんでしょう。

僕が起業をした動機で一番大きかったのは、
場所とか時間が固定された生活っていうのが、
ものすごくイヤだっていうことだったんです。
それを考えた時、消去法で、
ネットを使って出来る仕事を選んでいたんでしょうね。

そういうスタイルを
望んでいる人は多そうですよね。

真剣に話を聞くきっかけ

私、インタビューのやり方で、
清水さんに聞いてみたかったことがあるんですけど。

お!
どんなことでしょう。

清水さんが、話を聞く時っていうのは、
何を聞くか、あらかじめ考えておくんですか?


それは、あんまり細かく考えてないです。
その人がどういう人かっていうことは、
調べられる限りのものは見ておくんですけど、
何を聞くかっていうのは、
その時、その場の流れにまかせてます。

文章が、会話形式ですものね。

一番気をつけてることは、
相手が話をしてる時に、他のことを考えないことなんです。
先に、次の質問を頭で考えてると、
今話していることから注意が逸れちゃうから。
そうすると、ちゃんとした反応が出来ないなって思って。

私も、ときどきインタビューに答える
立場になることがあるんですけど、
最初にかっちりと質問が決められていて、
それを順番に聞いていくっていうスタイルもあるじゃないですか。
それだと、このことも話したかったんだけど、
っていうことが話せずに終わったりとか。
あと、構えて、優等生的な答えを用意してしまったり。

最初に内容が決まってると、
あんまり、予想外の流れにはならないですよね。

文章への書き方も、ちょっと、
どうしたら読みやすいのか考えていて。
たとえば、語尾の「ですよ」とか、
相手が話したことを忠実に書いたほうがいいのか、とか。

僕の場合は、文章が会話調だからというのもあるんですけど、
会話をしている時に、僕が注目している部分って、
相手が話した言葉というよりも、キャラクターの部分なんです。

言葉をそのままなぞってるわけでは
ないんですね。

文字に起こす時には、
実際の言葉そのままには書いていなくて、
僕がその人に乗り移った気持ちになって、
この人だったら、ここでどういう言葉を言うか、
っていうことを想像しながら書いてる部分が多いです。

その人になったつもりで!
そうなんですか。

だから、インタビューの文章とは言っても、
小説みたいなところもありますよね。

へえー、面白いですね。
私の場合は、まだ目的がはっきりしてなくて、
どういう方向性でいくか、定まってない感じです。

目的とか方向性は、あまり最初に決めなくても、
数を重ねるうちに、自然に出来上がってくるんじゃないかと思います。
実際にやってみると、予想を超えたことが必ず起こると思うので。

そうですよね。
この前、原発の部品を作っている人の話を聞いて、
すごくドメスティックな話しになると思ってたんですけど、
その逆に、海外とつながっている話ばかりで。

そういう、思ってもなかった話が出るっていうのは、
聞き手としては、すごく嬉しいですよね。

インタビューをするっていうのは、
真剣に話しを聞くきっかけになるなって思いました。
ある程度時間をとって、がっつり聞くっていうのは、
こういう機会がないとしなかったなって。

普段の世間話しではなかなか話せないことでも、
じっくりと掘り下げていい時間を与えられてますからね。


なんか、根掘り葉掘り聞いていいっていうのが、
すごく気持ちよくて。

ぶはははは!
それは、わかるなあ。

「なんでそう思ったんですか?」とか、
会話で「なんでなんで」って聞くと、
ちょっとウザいのかなあって思いますけど。
でもそれで、きっと、
その人自身にも発見がありますものね。

そうそう。
ここまでは自分も考えたことなかった、
ってことを考えるのは、楽しいことだと思いますよ。
(2012年12月 新宿「就トモカフェ」にて)

清水宣晶からの紹介】
思温さんは、就職活動を終えたばかりの大学4年生で、内定が決まった今もその勢いを止めることなく、数多くの活動やイベントをみずから立ち上げている。
そのエネルギーと行動力には驚くばかりで、思温さんの紹介によって新しい世界を知る機会もとても多い。

今回は、思温さんが運営している「ソトコエ」というサイトのインタビューとして声をかけていただいたのがきっかけで、一緒にお話しをさせてもらった。
普段の「ヒトゴト」とは違った形で、僕が話しを聞かれることが多く、思温さんが丁寧に投げかけてくれた問いによって、僕自身ずいぶんたくさんのことに気づくことが出来た。
これから、彼女が社会に出て活躍の場を与えられた時、いったいどれほど大きなパフォーマンスを発揮するか、今からとても楽しみにしている。

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