マツダミヒロ


「魔法の質問」主宰。質問家。ライフトラベラー。

時間と場所にとらわれないビジネススタイルで世界を旅しながら、各国で「自分らしく生きる」講演・セミナー活動を行う。

カウンセリングやコーチングの理論をベースに自分自身と人に日々問いかけるプロセスを集約し、独自のメソッドを開発。
質問するだけで魔法にかかったようにやる気と能力が引き出され、行動が起こせるようになることから、「魔法の質問」と名づける。

自分らしく働き、自分らしく生き、大切な人たちと豊かな時間を過ごすことを大事にしている。
(2024年11月 軽井沢「一年」にて)

質問とインタビューの違い

(清水宣晶:) ミヒロさん、今は日本にいるのは、年に60日くらい?

(マツダミヒロ:) うん、だいたい、60日から90日ぐらい。
拠点になる場所は、もうだいたい定まってきていて。
バルセロナと、南フランスの小さい村と、バスク地方のサンセバスチャンっていう町。
あとはオーストラリアのバイロンと、ハワイのマウイ島。

行く場所は、年末とかに1年の計画を立てたりするの?


基本は、なんにも計画を立てない。
夏はあの辺だよねっていうぐらいが、毎年のルーティン的に決まってて。
あとは、6月1日から行くのか15日からか、みたいなところをその都度調整する。

日本にいる時には、どこが多いの?

前は沖縄が一番多かったんだけど、今は軽井沢が一番多い。
今ぐらいの紅葉の時期とか、4月5月ぐらい。

それは、どの場所も、ある程度まとまった期間滞在するんだね。

僕の中での経験的に、「2週間の法則」っていうのがあって。


うんうん。

その土地に滞在して、だいたい14日目ぐらいから友達ができ始める。

それは馴染みの行きつけの場所ができるっていうこと?

そういうのもあるし、14日間以上だと、ホテルに住み続けるのって難しいんだよ。
キッチンと洗濯機があるところに暮らす必要があるし、スーパーとかに買い物に行く必要があるでしょ。
日常が観光ルーティーンじゃなくて、定住ルーティーンになると、そこに住んでいる人たちと出会う確率が高まる。

そうだね。
友達になる時って、アポイントを取らなくても日常の中で自然に顔を合わせる、っていうことの積み重ねがある気がするな。

あのさ、今日は、インタビューをするつもりはなかったんだけど。
なんかすごくいい話になりそうな予感がするから、今から話を聞かせてもらってもいい?

あ、もちろん、それはぜひ。

以前、あっきーにインタビューを受けさせてもらったじゃない?
あの時にも思ったんだけど。

うんうん。

インタビューっていうのは、誰もがやった方がいいと思う。

おお!
それは僕も同じことを思ってるんだけど、ミヒロさんはどういう理由でそう思ってる?

たとえばなんだけど。
お客さんが来ませんとか、売上が上がりませんっていう人の問題を解決する方法が全部そこに詰まってる気がして。
人の話をちゃんと聞けて、その奥にある思いを聞けたら、人が何で困ってるのかも、何を求めてるかも知ることができる。
それがわかれば、解決する方法を提案することもできる。

ミヒロさんの「魔法の質問」って、インタビューにも近い気するんだけど、何が違うんだろう。

質問とインタビューの違い。
なるほど。うーん・・。

質問は、その相手のための問いなので、聞き手が聞いて、よかった、楽しかったみたいなのがゼロだとしても、成り立つものなのかなと思っていて。
で、インタビューは、自分が聞きたいことこも含まれてるかなっていう。

それは、わかるな。

質問するときって、100パーセント、相手のためなんだよ。
で、答えも期待しないというか、答えをもらわなくてもいいし。
自分が聞きたい答えっていうのがそもそもないっていう感じかな。

質問する時ってのは、相手にとってこの質問がよさそうだなっていうチョイスはあるのかな。

あるある。
相手にとってこの質問がいいだろう、しかないかな。

コーチングとかカウンセリングってあるじゃない。
そういうのもわりと、相手が必要そうな問いを投げかけたりするけれど、それと似たようなところはあるの?

そうそうそう。
いままでに、カウンセリングもコーチングも学んできたから、そのエッセンスを魔法の質問に取り入れてるんだけど。

カウンセリングって、受容するとか、寄り添うとかっていうのがキーかなと思っていて。
魔法の質問は、寄り添うもあるんだけど、そこからさらに、より成長するとか、変容するとかの部分も含まれてるところが違う。
で、質問とコーチングの違いは、コーチングは、目指すゴールがあった方がいいんだけど。
質問の場合は、それがあってもいいし、なくてもいい、っていう感じかな。

なるほど。
ミヒロさんが、コーチングとかカウンセリングとか学んできた中で、自分なりに、ここをもっとこうした方がいいよなっていうカスタマイズを加えてきた感じかな。

こうした方がいい、というよりも、この領域のこのやり方が自分にはちょっとしんどいなっていう、どっちかというと、消去法のポジション。
自分の不得意なところから、ちょっと逃れた場所にいるって感じ。

不得意なところ。

ちゃんと聞かなきゃいけないとか、もっと行動しなきゃいけない、ってのは、ちょっと向かないなっていう。

傾聴するべき、とかそういう「べき」があるってことなのかな。

そうそう、そのとおり。
こうあるべき、みたいなのをはずしていった感じ。

「旅先」より「拠点」にしたい

いろんなところに場所を変えて住む中で、時期によって、ここが一番気持ちいい、ってのはあるの?

そうだね、僕は自分自身の体質を表すのに、「冬アレルギー」っていう言葉を使ってるんだけど。


ぶははははは!
冬が嫌いなの?

実際の話、寒いとこにずっといると、咳が止まんなくなって。

あ、そうなのか。

で、もう喋れなくなるんだよ。
肌もちょっとなんか荒れてくるし。
で、もう1つの要素として、肌に物を付着させたくない。

何かが肌に触れているのが気になるの?

足とか特になんだけど。
半袖半ズボンでいたい。
もっと言うなら、裸でいられるなら、その方がいい。

そうなんだ!

そういういろいろを掛け合わせると、寒い場所にはいられないな、ってのがあって、暖かい場所に身を置いてるのも理由の一つとしてあるかな。

そうか、じゃあ、冬にはもう日本にいたくない?

沖縄にいても寒かったね。
冬は、15度ぐらいなのかなあ。

山形なんかいたら、もっと寒いしね。

あと、やっぱり環境を変え続けることで、いい意味で、気を抜かなくなるっていうか。

どういうこと?

たとえば、毎日行く場所、起きてすること、話す友達、話す言語、食べ物が違うと、適度なストレスがかかる。
ある程度環境が変わった方が、考えることが多くなるから、僕の中ではそれがクリエイティビティに繋がるかなと思っていて。

なるほどなるほど。
毎日同じことを続けていると、刺激がだんだん少なくなっていくよね。

そう、インスピレーションはちょっと湧きにくいかな。

落ち着く場所は、もうすでに各地に見つけてると思うんだけど、まだ未知のとこに行こうっていう気持ちはある?

それは、ないんだよね。

あ、ないんだ!
でも、落ち着く場所を見つけるまでの過程は、いろんなところを探しに行ったわけでしょ。

そうそうそう。
で、十分ここがいいっていう場所が見つかったっていう感じだね。

じゃあ、すでによく知った場所を巡回していく、っていう住み方がちょうどいいのかな。

うんうん。
ありがたいことに、その土地土地で友達もいっぱいできて。

同じ住むにしても、未開の地で誰も周りに友達がいないっていう状態だと、あんまり居心地いい感じはしない?

どちらかというと、「旅先」という文字列よりは、「拠点」という文字列にしたい。

なるほど。

拠点になると、その土地や、土地の人とコネクトしてるっていう感じがあって、そうすると、そこの場所ならではの何かが生み出せる可能性が高くなる。

軽井沢でも、「3泊4日で来ました」を毎月やってても、御代田のコワーキングスペースにはいかないと思うんだよね。
そういう場所に立ち寄ったから、あっきーとも再会できたわけで。

そうだね。
旅行だと、ローカルなコワーキングには行かないもんね。

そうそうそう。

気候のことでいうと、僕は逆に寒いのが好きでさ。
長野はとても自分に合ってる。

冬は好き?

冬が一番好き。
軽井沢って夏に来る人が多いけど、夏より全然、秋とか冬の方が綺麗だなと思ってて。
蔵王の樹氷とか、山形も好きだな。

僕は雪かきがイヤで。
実家が寿司屋だからさ、駐車場が広いのよ。
その雪かきをしなきゃいけなくて、その記憶が。

それは大変だな。
基本的にはじゃあ、いつも行ってるのは暖かい地方なの?

そうね、今のところは。
あとは、海が好き、っていうか、塩水に浸かりたくって。
毎日それがなんか、自分の浄化ルーティーンみたいになってる。
海か温泉があるところがいいな。

軽井沢も寒くない?

軽井沢はね、若菜が日本で一番好きな場所だから、それも大切にしたくって。
で、温泉もあるし。

肌に物を触れさせてくなっていうのは昔からだった?

15年前ぐらいからかな。
いろんな暖かいところに仕事とかでも行くようになって。
あ、こういう服装の方が自分は心地いいんだっていうのに気がついた。

なんか、いろんな当たり前があって、会社は事務所があるのが当たり前、そこに通うのが当たり前、働くときはスーツを着るのが当たり前、みたいなものが色々あるじゃん。

別の環境とか文化に行った時に、違う服装だったり、違う食べ物だったり、違う働き方だったり。
そういう選択肢がありなら、そっちを選びたいな、って思って。

そうだね。
ミヒロさんって、「ほんとにこれは当たり前なのか?」っていう根本から考えることが多いなと思う。

オーストラリアのバイロンベイが好きなんだけど、カフェとかショップとかは大体夕方4時に終わるんだよ。
そうか、夜働かなくてもいいんだ、と思って、夜に仕事するのをやめたりとか。
いろんな当たり前が、本当は当たり前じゃなかったってことに思い至った。

20年続いた理由

「魔法の質問」は、もう20周年なんだね。

そう、20周年。

なんでこんなに続いたんだろう。
それと、なんでここまで広がったんだろう。

続いた理由と、広がった理由はまた違って。
続いた理由は、僕が、無理だと感じることをしてないから。

わかるわかる。

で、広がった理由は。
それは、手前にある結論としては、応援してくれてる人たちが多いからなんだけど。
じゃあそれはなぜかと考えた時に・・なんでだろうな。
僕の力ではないと思ってるからかな。

不思議だよね。
ミヒロさんって、グイグイ強引に広げていくタイプではないのに。

そう、僕自身は何にもしてる感じがないのに、これはほんとに不思議だなと思う。

それだけ、「魔法の質問」に救われたっていう人とか、人生が変わったっていう人が多いんだろうね。

質問って、能動的に取り組まないと成果が生まれないシステムなんだけど、僕が「これやった方がいいよ」って言って成果が出るんじゃなくて。
その人が、僕の出した問いによって、何かを考えて、何かを行動することで、継続するエネルギーが生まれたりして動くと思うから、それはちょっとポイントかもしれない。


ああー、そうだね。
余白があるってことだね。
細かく全部を指示するわけじゃないから。

そう、大体の方向性で示して、あとはやるのは自分っていう。
大きい問いで言うと、「どうしたいの?」っていうことだから。

そうやって、一番根本的な大事なところだけを取り出して、すごくシンプルにしてるから、広がってるってのもあるんだろうね。

そうだね。
難しいこともしてないしね。
本当、誰でもできるようなことしかしてないから。

インタビューのコツを今、感じたんだけど。
普通のインタビュアーと、あっきーとの違い。

うんうん。

普通の人たちは答えを聞いてる時にもう、次は何を聞かなきゃ、って考えてるけど、あっきーはたぶん違うと思う。

あ!そうだね。
言われてみれば。

これは本当に重要なとこだと思う。

僕は、話を聞きに行く時に質問リストを用意しないことにしていて。
そういう手ぶらの状態で行くのは不安ではあるんだけど。
でもその、不安なまま行くのがいいんじゃないかと思ってる。
何が起こるか、僕も相手もわからない、今はじめて考える話っていうのが、一番いい話なんじゃないかなって。

それはみんなできないんだと思う。
怖くて。

怖いよね。

何が怖いかって、多分ね、間が怖いと思う。

ああー。

間が怖いと、次の質問すぐ考えなきゃ、って。
で、そうすると今の話聞くヒマないよね。

頭のリソースが、次のことを考えることに取られてしまうから。

そうそう、そうなのそうなの。
これ、ほんとに重要なところだと思う。

今は、相手がミヒロさんだからね。
ミヒロさんは、いくら間が開いても大丈夫な人だってわかってるから。

いいな。
インタビューは本当にいいよ。
みんな勉強した方がいい。

そういう企画をやろうかな。
「みんなインタビューをしましょう」っていう。

「続く」が大事

ミヒロさんの場合、「質問」をずっと続けてるのは、それをやりたいっていう気持ちからなの?

それが、そういう気持ちはまったく無くって。


えええ!?

これは若菜が言ってる言葉なんだけど、声には3つの種類があって。
頭の声、心の声、魂の声。

ほうほうほう。

頭の声は思考の声だから、「これやると、得かな損かな?」「やった方がいいかな?」みたいな。
心の声は、「これやったら嬉しい」とか、「これをやってしまったら悲しい」。

なるほど。

で、魂の声は、「なんだかよくわかんないけど、これなんだ!」みたいなのがあって。
僕の「質問」は魂の声だから、自分でも何やってんのかよくわかんない(笑)。

そうなんだ!

とりあえず、ずっとなんか、やる感じになってるから、そうなってるっていう。

それは、心の声の、やっていて楽しいともまた違うわけなんだ?

そうだね。
その中で、やっていて楽しいことを作るはあるかもしんないけど、そもそもなんで問いをやってるんですか、っていうのは自分でもちょっとよくわかんない。

そこはもうロジックじゃなくて、これは自分がやるべきだっていう。

そうそう。
何か始めるときには2パターンあると思っていて。
インスピレーションが来たから始める、はよくあると思うし、それでも全然いい。
いいというか、それを取り入れるべき。

うん。

それともう1つ、なぜかわかんないけど続いてるっていうのは、なんか別のアプローチだと思っていて。
それこそ、この2つが重なるものはとても意味があるだろう、と。

なるほど、そうだね。
続くって大事だよね。
始めるのは、その時の流行りとか、そういうのに乗せられて始めることもあるけど、続くのは、ほんとに好きじゃないと続かない。

そう。
今あっきーが言ったフレーズで、すごくいいなと思ったのは、やっぱり「続ける」と「続く」は違うんだよ。

ああ、そうか!

「続ける」は能動的で、「続く」は、すべてから後押しされて、なんでかわかんないけど続いてる、みたいな。
「続く」が大事。

それは、本当に。
「続ける」は自分で意図できても、「続く」は自分でもコントロールできないもんね。

・・と言いながらも、僕自身は、執着はまったくないので、何がいつ終わっても無くなっても、基本なんとも思わないんだけど。
続くものがただ続き、終わるものがただ終わるって感じ。

ぶはははは!
流れに乗ってるんだね。

自分のYouTubeチャンネルとかでも、そもそも別に能動的じゃないからさ、自分のことを言うことができなくて。

ほうほう。

だから、流れのままに、聞かれて答えるもの、っていうのが一番、本人のことがよくわかる気がする。

聞かれて答えるもの。

僕が一人で、「僕はこういう人です」「こんなことができます」って話すよりも、誰かから聞かれたことについて話しているほうが、受け手としては自然だなと。

それは、すごくよくわかるよ。
他者の視点が入ってると、そのぶん、客観性とか信頼性が高まるから。
インタビューでも、一人語りの形で書くよりも、対話型で書いたほうがずっと、人柄が伝わる気がしてる。

そう思う。

ミヒロさん、そういえば「ライフトラベラーズカフェ」っていうラジオ番組もやってたじゃない。

うんうんうん。

音声と文章って、伝わり方は違うと思う?

そうだね。
間を伝えるっていうのは、文字では難しい気がするから、きっと音声がいいんだろうな。

ほんとはね、伝わりやすさで言うと、普通の文体よりも会話体の方がいいし、会話体よりもさらに会話の方が伝わるよね。
それは分かりつつ、僕自身は目で読む方が入りやすいタイプだから、悩ましい。

ラジオはラジオで、聴きたいっていう方がいるんで、役に立たないラジオをやってる。

役に立たないラジオ。

うん、「役に立たない」が結構重要で。
みんな役立つものばかり見てるじゃん。

はい、はい。

役立たないけど見られるものっていうのは、ファンの人たちが増える。
YouTubeでも、まったく役に立たないVLOGとかをいっぱいアップしてるんだけど。
役立つコンテンツの1万回再生よりも、役立たないものの100回再生の方が価値があると思ってる。

なるほどなあ。
それを見てる人は、ほんとに好きってことだからね。

そうそうそう。
僕が最近ここ数年、とても思ってることは。
「役に立つか」よりも、「そうなりたいか」の方が重要かなと思っていて。


おお!

たとえば、すごく人気だったり有名な方で、話を聞いて、なるほどと思ったとして。
その人がすっごい忙しくて、自分の時間もなくて、家族との時間もなかったら、その人みたいには別になりたくないっていうのって、本質的な感覚なのかなと。
それよりも、あんな生き方してみたいなとか、ああいうパートナーシップになってみたいなって思ってもらえる方が素敵だなと僕は思っていて。

そうだね。

それは大事にしてる。

ミヒロさんの発信は、役に立つ軸でなくて、ライフスタイルが中心だよね。
いかに実用的かっていう軸じゃない。

みんな、読者を増やしたいとか、チャンネル登録数を増やしたいって言うんだけど。
じゃあ、増やして、役立つものをいっぱい発信し続けて、っていうルーティーンになった時に、その暮らしはちょっと目指したくないな、って思うんじゃないかな。

そうだね。
それを見ている人は、発信者が好きというよりは、情報の有用性のほうに興味があるわけだから。

「昭和の呪縛」って僕は呼んでるんだけど。
頑張った方がいい、大変な方がいい、売上がある方がいい、お金持ちの方がいい、みたいな指標があるけど、それと幸せは全く関係ないから。
「本当は何のために生きたいんだっけ?」っていうところを、いつも問いかけていたい。
(2024年11月 軽井沢「一年」にて)


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