鶴田玲子

(2008年4月 原宿「Pizza Express」にて)

アロマセラピーのエッセンス

(清水宣晶:) 玲ちゃんは、いつからアロマセラピーを仕事にしようって思ったんだろう。
前に勤めてた旅行会社を辞めた時は、まだマッサージの勉強をしようとは思ってなかったの?

(鶴田玲子:) うん、辞めた時はまだ考えてなくて。
ちょうどその頃、大阪に行って自転車で心斎橋をフラフラと走ってた時に、今私が働いている(アロマセラピーの)お店の心斎橋店の前をたまたま通りかかったのね。
で、何か気になって、そのお店に入ってみたの。

その時はまだ、アロマセラピーのことって知らなかった?

知ってて、漠然と興味はあったんだけど、あんまり詳しくはわからなかった。
その後、心斎橋の駅の本屋でアロマセラピーの本を買って、スターバックスで読んだの。
で、「もしかしたら、これが私のやりたいことかも!」って思って。

じゃあ、たまたまチャリで店の前を通りかかったのが縁だったんだなあ。

そうなのそうなの。
それから、そのお店のスクールに通って勉強を始めてね。

アロマセラピーっていうのはさ、マッサージとはまた別のものなの?

アロマセラピーってのは、まず相手の話しを聞いて、その状態にあわせて5種類か6種類ぐらいの植物のエッセンスを選んでもらうんだけど、その成分を肌の表面から浸透させて血液の中に入れるってことを目的として、マッサージをするの。

え!?そうなんだ!
じゃあ、マッサージは、体をほぐすのが目的ってわけじゃないんだね。

マッサージ自体を気持ちいいって言ってくれる人もいるんだけど。
一応、目的としては体の中にオイルを入れるためのマッサージなの。

普通にマッサージをするだけじゃなくて、まずカウンセリングから入って、その人がどういう状態にいるのかを知る、っていうのが面白いよな。

この前、内科のお医者さんがお客さんとして来て。
仕事で疲れてて、更年期障害もあって、とてもイライラしてたのね。
さあ、どうすれば気持ちを落ち着かせてもらえるかなって考えたんだけど。

うんうん。

でもその人も、最後にはほんと、表情がにこやかになって。
気持ちがリラックスすることで、そういう余裕が持てて笑顔も出てくるんだって嬉しかったの。

それは、話しをする過程でリラックスするのかな。
マッサージをしてもらってる時なのかな。

両方だよね。
顔とか体とかを人に触れられることで、癒されるってのもすごくあるしね。
人によっては、今まで抑えてたことを出てくることがあって、泣き出しちゃうこともあるの。気持ちが緩むんだろうね。

すごいなあ、それ。
まさにカウンセリングだなあ。
玲ちゃんは、来た人と話しをするのも、楽しい?

うん。楽しいけど、難しい。
この人はいったい何を求めてるんだろう?って考える。

うんうん。
話しをするっていうことと、マッサージをすることだと、どっちのほうが好きなの?

私自身、マッサージをすること自体をすごくしたい、というわけではないの。
私が仕事をしていて喜びを感じるのって、その人がすごく楽になった、とか、必要とされてた、とかそういう部分で「やっててよかった」って思うんだよね。

そうか。
手段は何であっても、人を楽に出来るっていうところが楽しさなんだね。

うん。
今、ストレスを抱えてる人がすごく多いじゃない?
私、病気って精神面から来るトラブルだと思ってるのね。
香りは、五感の中で本能とか脳に直接つながってる唯一の感覚みたいで、とてもリラックスに効果があるものなんだって。
それをちゃんと使えるようになって、役に立つことが出来たらいいなって思う。

癒しのスペシャリスト

玲ちゃんは今の仕事、ずっと続けていきたいって思ってる?

まだ答えは出てないんだ。
フリーでやってみたいっていう気持ちもあるけど、これが天職かどうかもわからないし。わからないけどやってみましょうっていう感じ。
治療とかをしたいなら、鍼とかの勉強をイチからやるのも一つの手かもと思うし。

そうだよね。アロマテラピーに限らないんだろうな。
要は人を癒すという部分のほうが重要なんだもんね。

高校生の時クラスメートの人に「玲子と一緒にいるとホッとするんだよね」って言われたことがあったんだけど、私、それを聞いた時に、めちゃくちゃ嬉しかったのね。
きれいとか、かわいいとか言われるよりもそれが嬉しくて。
そういう存在でいたいのかなー、と思うの。

オレはやっぱり、今やってることは玲ちゃんに向いてると思うよ。
玲ちゃんの特性にすごく合ってるイメージがあるし。

うん、周りにもそう言ってもらえること多いんだけど、
私、他の人よりも自分の気持ちに気づくのが遅いからね。

そうか(笑)。

仕事の中で、一対一で話しが出来るっていうことは好き。
そうすると、すごくその人を知れたり、自分のことも知ってもらえるし。

うんうん。
そういうところ、いい仕事だよな。

本当の理想を言えば、アロマだけじゃなくて、その日の気分とか体の状態に合わせて選べるようになったらいいな。

アロマ以外にはどんな方法があるの?

たとえば、枇杷の葉の温灸とか、鍼とか、漢方とかね。

すごいバラエティーの広さだなあ。
それこそ、癒しのスペシャリストだな。

そういう人、きっと多いけどね。
フリーでやっていくとしたら自分にしか出来ないオリジナリティーがなきゃダメかとも思って、それがまだ見つかってないんだよね。

でも、同じことやっていても、やる人が違えば内容も質も変わるから、その時やってることが玲ちゃんのオリジナルってことでいいんじゃないかな。
あんまりオリジナルなことをやられるのもコワいし(笑)。

まあね(笑)。

今でも、玲ちゃんじゃなきゃ出来ないことは多いと思うよ。
玲ちゃんじゃないと安心出来ない、とかね。

うん、そういうのが嬉しいの。
私じゃないと安心出来ない、とか私にしか話せない、とかそう言ってもらえることが。
アロマそのものが、ストレスケアっていうことに向いてるのね。
医療ではないから、それで治すということまではいかなくて、健康維持なんだけど。
病気になる前に、体の状態を良くするっていう意味では、すごくいい気がする。
あと、実家でやるとしたら、ご飯を食べてってもらいたいなと思う。

おお!
自分でご飯も作るの?

マッサージをしたりしながらだと、自分では作れないと思うんだけど。
ご飯も、その人に合ったものを出せたらいいなって思って。

あっちゃん(伊藤敦子)みたいな人がマクロビの料理を作ったりしてね。

そうそう、あっちゃんもいいと思ったし、あと私の母親とか(笑)。

スゴいな、それ!
しかも実家で。それいいよ!

うん、そういうことも、案として考えてる。
そもそも私がこういうことに興味を持ったのは母親の影響なの。
彼女は、ご飯を作ることもすごく好きだしね。

教育で伝えられること

玲ちゃん、大学生の時に神戸の学校に授業を手伝いに行ってたことがあったじゃない。
その時は、どうして教育に興味を持ったんだろう。

あっきーが前に、「物にはあまり執着はないけど、形のないものにはすごくこだわる」って言ったことがあったでしょ?

うん、言ったね。

私もそうだと思うの。
私が一つ、とても大切にしている言葉があって、それもまさにそういう事を言ってるのね。
留学中にオレゴンで、車でお土産屋さんを通った時に、額に入ってたのを見つけた言葉で、「これいいなあ」って思って。

どんな言葉なの?

「この世で一番大切なことは、目に見えたり手で触れられるものじゃなくて、心で感じないといけない」って言葉。
【(原文は、「The most important thing in the world can not be seen or even touched.
It must be felt with the heart.」)】
ひーさん(多苗尚志)が調べてくれたところでは、ヘレン・ケラーの言葉みたいなんだけど。

おー!なるほどなあ。
「星の王子さま」の中にも同じような言葉があるね。
「大事なことは目に見えないんだよ」っていう。

そう、それも同じことだよね。
で、私にとって、その一つの形が、教育だったの。

うんうん。

大学生の時の英語の先生で、印象的な人がいて。
真冬でもノースリーブ、みたいな感じで、自然主義愛好家っていう雰囲気なのね。

(笑)インパクトあるなー。

かなり感受性豊かな先生で。
その先生は、「You are special」っていうことを、授業の中で何度も色んな形で表現してくれるの。表現してくれるし、授業を通してそれがすごく伝わってくるの。
それで「ああ、私って特別なんだな」って気づかせてくれたのね。

それは、本当にいい先生だな。
ラブアンドピースだね。

そうそう、そんな感じ。
「あなたは特別なんです」ってことを、小さい時から伝えることが出来たら、きっとその子はキレたりしないんじゃないかなと思って。
あと、小さい時から好きなことがとことん出来て、それに早くから気づいたら色んな道がひらけるんじゃないかと思う。

そうだよね。
小さい時にそういう先生に出会ったら、人生変わるだろうな。

別に、小中高大、って行く必要もないと思うし。
もし途中でやりたいことが見つかれば、海外に行ったり、好きなことを追求してもいいじゃない?

うんうん。

私自身も、そういうことを人に伝えられる存在になりたいって思ったの。
小さい時にそういう思いを伝えられたらいい、っていうことで、教育にもすごく興味を持ったんだね。
(2008年4月 原宿「Pizza Express」にて)

清水宣晶からの紹介】
玲ちゃんと話しをしていて感じるのは、言葉の選び方のセンスの良さだ。
普段話す時に使う言葉というのは、その人の価値観を表すものだと思う。玲ちゃんは同じ事を表現する時にも、常に肯定的で前向きな言葉を選択してくる。聞いた人の気持ちを害するようなことを決して口に出さない。
玲ちゃんは、メールにしても、普段の所作にしても、一つ一つにきちんと隅々まで気が行き届いている感じがする。たくさんのことに気づきながら、それを表には見せずに、さりげなく気遣ってくれる。本当に上品な人だと思う。
僕は、おばあちゃんといえるような歳になった時の玲ちゃんと、今と同じように話しをすることを楽しみにしている。他のあらゆる物事が移り変わっていったとしても、玲ちゃんは変わらずにそのままでいるような気がするからだ。そのような人と出会えたことを、とてもありがたく思っている。

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