岡田真希子

岡田真希子(おかだまきこ) 1977年 千葉県出身
海と山とに囲まれた千葉で高校時代まで過ごす。
都内の大学卒業と同時に、政府系金融機関に就職し、8年目を迎えた。
小さいころの夢:早く大人になる、峰富士子になる、本に囲まれて過ごす。
好き:書籍、動植物、料理、スコッチウィスキー、散歩、路地、空想、旅、映画、嗅ぐこと。
嫌い:オカルト、手を濡らす、手を汚す、数字、集団、粒粒、高いところ、寒いところ、束縛。
(2008年3月 沼部「森村邸」にて)

物語を求めている心

(清水宣晶:) マキは、何から影響を受けることが多い?
人とか映画とか音楽とか、そういうもので言うと。

(岡田真希子:) 大きく言うと「自分の経験」
で、本もその経験の中の一つ、って感じかな。
本は大きい。

昔からそうだった?

物心つく前からだね。
兄弟いないから、遊んでくれる人いなかったんだよね。
だから、夜は一人で本を読んだり、絵を描いたりする時間だったの。
私にとっては、なくてはならないもの。

そんなに必要なものなんだ?

なにかインプットをしてないと、欠乏している感じなの。
それは、マンガでもいいし。
映画じゃ、ちょっとパンチが弱いんだけど。

パンチが弱い(笑)。

コラムとか、活字であればなんでもいいし、もしなければ、百科事典でもいい。

それはまた、すごい活字ホリックだな。
読んだ後に書き留めたりとかってのはあるの?

いや、ほとんどしない。
そういう、読みながら線を引いたりするっていう文化があることも、最近知った。
本を、外側から見てるんじゃなくて、自分がその中に入ってるんだよね。

あー、なるほどな。
オレは、本の読み方って二通りあると思ってて、
言葉を求めている人と、物語を求めている人がいると思うんだけど、マキは物語を求めているんだろうな。

そうだね、物語を欲して読みまくるんだろうね。
百科事典を読んでても、そこで求めてるのは言葉や知識じゃなくて、そこから広がる物語なんだと思うから。

うんうん、そういうタイプの人の話しを聞いてみたかったんだよ。
オレは、言葉を求めて本を読んでいるほうのタイプでさ。
物語を求めるのって、どういう感じなんだろう。
自分で物語を作ろうって思うことはないの?

作ってたね、小さい頃は。

やっぱり、ファンタジーが好き?

物語っていうと、一般的には「ファンタジー」ってイメージが強いけど、でも、ファンタジーに限らず普通の小説であっても、そこに優れた物語があれば、何でもいいね。

どういう物語が優れた物語だって思う?

想像の余地があるような、余白があるもの。
あと、揺さぶられるのが好きだね。ただの文字のくせに、自分の中に感情がわきあがってきたり、その主人公の人生を生きている感じがするものがいい。
とりわけ、「せつない」っていう感情が好物で。

(笑)好物なんだ!

出来るけれどやらない自由

こうして話しを聞きながら、どこを掘り下げようか、ポイントを絞れずにいるんだけど、それは何でかっていうと、あんまりマキは、自分の中のほうの部分を見せないよなあ。

クセなんだと思う。
あっきーは、ひーちゃん(多苗尚志)と同じことを言うね。

やっぱり、そう言われた?

見せているように装ってるんだな。
パラサイヨにいるのは去年の10月からなのに前からいるみたいな気がする、ってみんなには言われるんだけど。
一見、開いている感じで話してるから、だいたいの人はそこで満足するんだね。

うんうん。

別に、意識的にやってるわけじゃないんだけれど。
基本的には、閉じてる、ね。

閉じているというか、あんまり自分からは明らかにしないのかな。
でも、投げかけられたものは、きちんと拾うよね。
声をかけられたりしたら、大体乗るしね。

うん、そういう流れに乗ることには、抵抗ない。

大学の時に、オリエンテーリング部で体育会系の部活にいたっていってたじゃない?
それ、最初は意外に思ったんけど、そういう体育会のノリってOKなの?

うん、結構好きなんだと思う。

わかるわー!
そういわれてみれば、マキに向いてる気がしてきた。

なんかそれ、いい意味じゃなさそうなのが気になるんだけど(笑)
強制的に押し付けられるのはイヤだけど、自分でそれを選択している場合は受け入れられるのよ。

自分に主導権があるってことが重要なのかな?

重要だね。
海外に行くたびに、財布の中のお金を持って、このままどっか行っちゃおうか、っていつも思う。

ん?唐突にそう思うの?

国内でもそうだね。
ちょっとどこか出かけた時、航空券を買って、そのまま北海道とかでもいけてしまうじゃない。
で、たまにそういうことをする。

たまにそうするんだ!

常に、そういうことが出来るけれどやらない自由、というのを確保しておきたいんだね。
それでバランス取ってるんだと思う。

ああ、なるほど。
自分が自分の意思で今の状況を選択している、っていう感覚がいいんだね。

2つで1つになる美しさ

マキのその、両極を求める感覚って面白いね。

ギャップというか、白と黒が見える美しさ、みたいのを意識しているんだと思う。
文章を書く時でも、2つの単語をセットにして並べたりが好きなんだよね。

2つの単語が並ぶ、っていうのは、反対語でも同意語でもいいのかな?

並列的なものなら、どっちでもいいね。
そういうものが自分の中にあればいいと思う

ん?どういうことだろう。
詩でいう、韻を踏むようなものなのかな。
どういう時に、そういう考え方をするの?

文章もそうだし、家具を買う時とか、そう考えるね。

そうなんだ?
たとえば椅子を4脚買うとしたら、同じ椅子で揃えたりしないってこと?

しないなあ。
皮と木の組み合わせにしたり、白と黒にしたり。

あー、そう!
オレは、まったく逆で、そういうところは同じもので統一して揃えたくなるな。

そういうクセ、なんだよね。

面白いな、そのクセは。
色々な場面で、きっとそれが表われるんだろうね。

京極夏彦の本でさ、「宴の支度」と「宴の始末」って2巻組の小説があるんだけど、その構成なんかすごく美しいと思う。

わかるわー。
その例は、すっごくいいなー!

なんかもう、理屈じゃないんだよ。
それに接した時に、心が「よし!」って喜ぶんだよね。

(笑)「よし!」って。

美しいでしょ?
2つで1つ、っていう対で完成するものが正しい、っていう感覚があるんだよね。

それは、中国の陰陽思想に近いよなあ。

物語でも、そういう構造のものを求めてる。
そういう物語に出会った時は、細胞のレベルで悦んでる感じがするの。
囲碁にも、美しさを感じるね。
将棋よりも囲碁のほうが好み。

あー、なるほどな。
言ってる感じはわかるんだけど、オレは全体が統一されているものが好きかな。
椅子とかでも、色違いよりも、全部同じというのが好き。
ただ、机が黒で、椅子が白、とかいう違いはありかな。

新興住宅地とかでさ、ロボットのように同じような建売りの家が並んでる景色があるじゃない。
あっきーは、ああいうの、どう思う?

ああ、オレは、ああいう景観、好きなんだよ。
団地とか、特に好きだね。
同じ形の建物が並んで、その中に同じような部屋が並んでいるような感じ。

それは、私と違うね。
私は、細胞みたいに同じものがびっしり並んでる状態って、感覚的に受け付けられない。

確かに、細胞みたいな密集の仕方はオレも気持ち悪いって思うな。
オレが惹かれるのって、機能美の部分なんだよね。
たとえば、トラックの後輪とか、鳥の羽根とか。
鳥の羽根は、美しくなるためにその形になったんじゃなくて、飛ぶための機能を追及した結果、あの形になった、っていうところがいいんだな。

必然から来ている、ムダのない形ってことだよね?

そうそう。それで考えると、団地って、ミニマムな形なんだよね。
住むための空間を効率的に切り出すという意味では、直方体ってのはベストな形だからさ。

そういう物の考え方は面白いなあ。
自然のものはどう?たんぽぽの綿毛とか。

自然のものは、たいてい美しい形をしているよね。
そもそも見られることを意識して作られてないから。

そうだね。紘一(吉村紘一)が同じようなことを言ってた。
自然のものはすべての形に、その理由があるって。
他にも、何か好きなものある?

あとね、空港にある、上が平べったくてタイヤが大きい作業車両なんか、たまらないね。飛行機を牽引するためだけにある車。

あるある(笑)。
言われてみればぼんやり思い出すけど、そういうところに視線が行くことはなかったな。
(2008年3月 沼部「森村邸」にて)

清水宣晶からの紹介】
マキには、「吉村紘一にマンガを教える会」で最初に会った。マンガが好きな人、という時点でかなり僕とは相性がいいのだけれど、話しをすればするほど、その独特な感性の面白さを次々と発見出来るようになってきた。マンガにしても、マキはかなり独特な作品を独特な視点から読んでいて、僕が知らない新しい世界へといざなってくれることもよくある。
この美人が、これほどにユニークな世界をその内に秘めているとは、実際に話しをするまでは誰にも想像出来ないことだろう。

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