上村雄高
猫フォトグラファー。 猫が8匹いて楽しいです! アロハやスカジャンが好きです♪ 目標「猫写真でみんなを元気に」「ほぼキジトラ猫写真集出版」ほか色々。 猫ブログ『猫撮る』『そとねことる』 http://nekotoru.com/299/ 取材ブログ『かみむら(仮)』 http://nekotoru.exblog.jp/ |
(2012年1月 国立「上村邸」にて)
レゴショップの起業
(清水宣晶:) 僕、上村さんの話しは、実生さん(上村実生)からよく聞いていて。
すごく自然な流れで、迷いとかまったくなく結婚した、
っていう話しを聞いて、
それはスゴイなあって思ったんです。
(上村雄高:) 当時は、すごく忙しくて、
そうでもしないと会う時間がなかったんですよね。
なんか、昔のことすぎて、
よく覚えてないっていうのもあるんですけど。
あ、これは、
まだインタビューじゃないんで。
わかりました。
(上村実生:) いや、実はもう、
インタビュー始まってるんだよ。
(笑)スルドい!
じゃあもう、いきなり、
上村さんの人生トピックに入ろうと思うんですけど、
まず、、
やっぱり、レゴ(LEGO)ですよね?
レゴですね。
レゴが僕の30代のすべてだったので。
カッコいい!
あれは、やってて面白かったし、
がんばりましたね。
レゴのネットショップを開業したのは、
DeNAを辞めた後ですか?
きっかけとしては、DeNAに勤めてた時、
会社が運営してたネットショップのポータル(ビッダーズ)に、
いろんなお店を誘致してたんですけど、
9割方の店が、うまくいってなかったんです。
なるほど。
それを見ていて、
ちゃんとやれば、うまくいくんじゃないか、
っていう思いがあって。
それなら、自分でやってみよう、と。
でも、経験がなかったんで、
最初は、安い物をいろいろ適当に買ってきて、
yahoo!オークションで試しに売ってたんですよ。
そしたら、偶然知ったんですけど、
どうもレゴがよく売れる、と。
あ、最初からレゴ専業じゃなくて、
いろいろと売ってたんですね。
試しにやってみた結果、
これならなんとかなりそうかな、と思って。
資金が20万円ぐらいしかなかったんで、
こまめに、売っては買って、を繰り返して。
そんな感じだったんですよ、最初は。
運転資金20万でまわしていくってのは、
なかなかコワイですね。
地道に、ちょっとずつ規模拡大してって。
ある程度大きくなった時に、
楽天に出店しましたね。
レゴは、もともと好きだったんですか?
いや、全然。
ええぇぇ!?
レゴの中でも、
スターウォーズのシリーズばっかり売れるんですけど、
僕は、スターウォーズも特に興味なかったんですよ。
ひどい話しなんですけど。
(笑)じゃあ単純に、
売れるからやってた、っていう。
お客さんから、
熱いレゴトークとかのメールがくると、
「どう返していいかわからない」って困ってたよね。
いや、僕もね、
どんだけレゴが好きな人なんだろう、って、
期待してたとこありますよ。
まあ、ほんと、ひどい話しなんですけど。
僕、洋服が好きだったんで、
アロハシャツとか、アメカジ系のスカジャンとか、
そういうのを本当はやりたかったんですよ。
でも、資金が無いっていうのと、
洋服は仕入れが難しいっていうのがあって。
でもそれは、
ショップ起業のモデルケースとして、面白いですね。
好きなものを売る、よりも、
売れるものを売る、から始めるべきってことですよ。
レゴを選んだのは、正解だったんですね。
そうですね。
今はトイザらスがあって、
レゴの品揃えとかもスゴイんですけど、
当時、レゴの商圏って、アメリカとヨーロッパがメインで、
日本にはまったく力入れてなかったんです。
レゴジャパンにまとめて商品が入ってきて、
それが売り切れたらもう終わり、っていう。
なるほど。
「スターウォーズ」なんかは、
もう、すごい人気があったから、発売してしばらくすると、
日本ではもう手に入らない状態だったんですね。
それを海外からまとめて仕入れて、売ってたんです。
そうすると、ウチでしか売ってない、
っていう状態になって。
独占状態になってたんですね。
一番ピークだったのは、
「スターウォーズ」のエピソード3が公開された時で。
他の店の商品が売り切れたタイミングで、
100個とか200個とか仕入れると、
あっという間にさばけちゃう。
うわー。
だから、この部屋とか、
天井までぎっしりレゴだらけだったです。
1個3500円とかするものなのに、
100個ぐらいは、10分で売り切れちゃうっていう。
もう、こっちもびっくりですよ。
メールチェックするたびに、
ビビビビーッて注文メールが入ってきて。
それは気持ちいいですね!
レゴって、個人の人が、
通販で海外から買おうと思えば買えるんですか?
買えますね。
アメリカは、レゴのマーケットが盛んで、
ブリックリンクっていう、
レゴ専門の楽天みたいなのがあって、
最初は、普通にそこで買ってたんですよ。
あ、上村さんが、
個人として注文をして?
そう、
で、たくさん注文してるうちに、
向こうの店から直接、取引を持ちかけてくるようになって、
まとめて売ってくれるようになった。
じゃあ、
それから、卸みたいな感じで、
個人で普通に買うよりも安く買えるようになったんですね。
そうです。
当時、レゴジャパンは、
海外の倍ぐらいの値段で売ってたんですよ。
だから、割りと普通に、
海外から買って売るだけでも利益が出るっていう。
同じ直営店でも、海外と日本で、
売値が違ってたんですね。
楽天で、個人でやってるお店の場合、
月商300万が限界って言われてたんですけど、
一番売れた年の12月は、1000万を超えた時がありました。
月商で!
それは、ものすごい。
やっぱり、商材選びが大事なんですね。
僕も、レゴがこんなに売れるものとは、
想像もしてなかったです。
もともと子ども向けに作られてるものじゃないですか。
でも、実際に買うのは、僕ら世代なんですよね。
スターウォーズの映画をリアルタイムで観てた人とか。
うんうん。
面白いなと思うのは、同じレゴでも、
スターウォーズはものすごい売れるんですけど、
ハリーポッターは、全然売れないんですよ。
なるほど。
大人が買うものじゃないと売れない、っていう。
レゴの中に入ってる、
人形だけを売ったりもしてたんですけど。
それも、100個とかまとめて買う人がいるんですよ。
ああ!
ストームトルーパーなんかは、
たくさん並べたいってのあるでしょうね。
それぞれのエピソードごとに、
いろんな種類のレゴが発売されるんですか?
そう、エピソードごとに20種類ぐらいですかね。
で、マニアの人は、それを全部買うんですよ。
スゴい!!
全部で5~6万ぐらいするんですけど、
そういう人が何十人もいるんです。
「奥さんに怒られるから、会社に送ってくれ」
って人もいたよね。
いや、そりゃそうでしょう。
そんだけまとめて家に届いたら、
奥さんも、「フザけんな!」ってなるでしょう。
でもどっちみち、買った後、家に飾れないけど。
高いものほど、
大人の人がスゴイ勢いでばんばん買っていって、
宇宙船の「ミレニアム・ファルコン」なんかは20,000円くらいするのに、
仕入れた分だけ、あっという間に売れていきましたね。
それはでも、ちょうど、
スターウォーズのブームとも重なったっていうのは、
タイミングもよかったですね。
始めた頃が、エピソード1の直後ぐらいで。
だから、エピソード1は観にいかなきゃ、っていう、
義務感で観に行きましたね。
ぶはははは!
さすがに、まったく観てないってのは、
まずいっていうことで。
その後、エピソード3が上映されてた時期は、
ものすごい盛り上がりました。
完結編ですもんね。
今だったら、レゴは、
トイザらスでも買えるんですか?
買えますね。
トイザらスは、すごく品揃え充実してます。
じゃあ、
いい時期に始めて、いい時期に撤退したんですね。
これは、マーケティングの授業の
いいモデルケースになりますよ。
うん、あのまま続けてたとしても、
今どうなってるかわからないです。
なんか、予想外の反応がいろいろあって、
それはすごく、やってて勉強になりましたね。
猫フォトグラファーへの道
レゴのショップは、やめようと思ったのは、なんでだったんですか?
やめたくなったっていうよりも、
カメラマンになりたくなったんですよ。
あ、そっちが先なんですね。
ネットショップをやってた時、みんな、
お金を払って物を買ってくれてるじゃないですか。
でも、手に入りにくいものを買った人なんかは、
「ありがとう」とまで言ってくれるんですよ。
お金を払っているのに、
さらにお礼まで言ってくれる。
それがびっくりで。
ショップの業務はすごい忙しいけど、
人にありがとうって言われるのって、なんか嬉しいなって思って。
自分が働く理由として、
それを今後求めていこうかなって思ったんですね。
なるほど。
そう考えると、モノが手に入ったからありがとう、って、
なんか、本質じゃないじゃないですか。
どうせなら、そうじゃなくて、、
形のないものを提供しようってことですね。
そうです。
本質的に人の役にたって、ありがとうって言われるには、
何をしたらいいか、って考えてて。
そんな時に、ネットで猫の写真をみて、
あ、これは面白そうだな、って思ったんですね。
写真で何かを伝えるのって、人の役に立つんじゃないかな、と。
ネットショップを続けながら、
ってのは考えなかったですか?
考えなかったですね。
もう、他のことが出来ないぐらい、
365日ずっと忙しかったんですよ。
で、人を雇ってまでやりたいことではなかったので。
写真は、昔から撮ってたんですか?
いや、撮ってなかったです。
猫の写真が撮りたいな、と思った翌日に、
小さいカメラを買いに行ったんです。
最初はそれで撮ってて、物足りなくなって、
大きいカメラを持つようになって。
で、学校に通ったんですね。
そう、
ちゃんと勉強したいな、と思って、
学校に行って、写真の基本的なことを教わりました。
写真の勉強してる時は、
何を撮るっていうのは決めてなかったんですか?
それは、基本的に猫を撮るって決めてたんですよ。
動物写真家で有名な人って、
岩合光昭さんとか何人かいるんですけど、
そこに入るのが目標、っていう感じで。
猫は、昔から好きだったんですか?
すごく好きになったのは、
ウチの実家の近くで、猫を拾ってからですよね。
で、3匹目に拾った猫が子どもを生んで、
どんどん増えていって。
その、子猫が生まれたっていうのが、
また、良くて。
ああ!子猫は、
抜群にいい被写体ですよね。
その時に撮っておいた写真を、
雑誌に載せてもらったりして、
そこから本格的に始まった、っていう感じですね。
猫ってのは、
撮っててすごく面白いでしょう?
そう、一瞬の表情とか、すごい面白いですね。
瞬間的に、笑ってるような顔とか叫んでるような顔したり。
ほんとは、あくびの一コマだったりするんですけど。
そういう対象が、
常に自分の横にあるってのはいいですよね。
毎日、かなりの枚数を撮ってますか?
学校に行って習ったのは、
まず、とにかく数を撮りなさい、と。
プロの人なんかでも、仕事の他に
プライベートで、月に何万枚と撮ってるんですよ。
そうでしょうね。
デジカメだと、気にせずにいくらでも撮れるし。
いっぱい撮ってると、
たしかに、いろんなことに気づきます。
最初は、「こういう写真が撮りたいんですけど」って言われても、
どうすればいいかわからなかったんですけど、
最近ようやく、カメラマンらしく振る舞えるようになりました。
こういう時はこう撮る、っていう、
セオリーみたいなのがあるんですか?
すごく基本的なことでは、
人を撮る時でも、男の人の場合は、
横から光を当てて陰影を出すと、かっこ良く写るんです。
なるほど。
でも、女の子でそれをやっちゃダメなわけですね。
そう、女の子の場合は、
逆に、正面から明るく光を当てて、
質感を消すんです。
プリクラみたいな技ですね(笑)。
同じ人を撮っても、カメラマンによって、
出来上がりが全然違うんでしょうね。
撮る位置でも、
そのまま目線の位置で上から撮ると、
足が短く見えちゃうから、
ウエストよりも下の位置から撮って長く見せる、とか。
そのあと、フォトショップでレタッチしたりするから、
それで、また変わったり。
そうですね。
商品とかでも、8割ぐらいの出来で撮れれば、
あとはレタッチでどうにでもなったりするんで。
そうなってくると、写真てのは、
ありのままを写してるわけじゃないですね。
写真て、「真実を写す」って書くじゃないですか。
でも、それって日本語で、
もともとフォトグラフっていう言葉は、
光によって描くもの、みたいな意味で。
元は「写真」っていう意味じゃないんですね。
そう、だから、
「写真」と「フォトグラフ」では若干意味が違って。
僕の目指すものは、フォトグラフのほうに近いかな、
と思ってます。
人の役に立つ写真
猫以外の写真も、撮ることありますか?
最近は、取材活動みたいなのを始めて。
取材活動?
福島の避難の問題とか、
去年は霞が関で毎週のように集会があったので、
そこに行ったり。
そこでは、写真を撮るだけじゃなくて、
取材もするんですか?
話しも聞きますね。
大手のメディアが入ってるような記者会見じゃなくて、
もうちょっと自由な感じの記者会見をやってるところがあるんですけど、
そこに行ってみたり。
そういう記者会見の場所っていうのは、
許可証とかなく、誰でも入れるんですか?
割りと、自由に入れますね。
それも、びっくりしたんですけど。
そんな身近なところで、
直接、話しを聞く場が開かれてるってのは、
知らなかったですよ。
そういうところに行くと、リアルに、
実際に被害を受けてる当事者が話しをしていて、
事の真相が伝わってくるから、なるべく、
そういう現場に、実際に行ってみたいと思ってるんです。
なるほど。
この前、カレンダーを作ったんですよ。
福島県の、原発から20km以内に置き去りにされたペットを、
保護して預かってる人に会って。
そうか、原発の近くの人は、強制避難だったから、
ペットを置いて逃げないといけなかったんですね。
20km圏内には、牛の牧場もあって、
国からは殺処分しろ、って言われてるんですけど、
殺すのはいやだ、って言って抵抗をしている人もいて。
その人が、渋谷で街頭演説をしてるんです。
街頭演説って、
だいたい素通りしちゃうんですけど、
まっとうな主張をしてる人もいるんですね。
そういう人に取材をして、写真を撮って、
ブログで伝えていくっていうことも、最近始めました。
フォトジャーナリズムですね。
写真をメインに、文章を添えるっていう。
撮りたいと思うのは、
こういう雑誌の写真ですね。
ああ!
こういう写真はほんと、力があると思います。
普通じゃ入れない場所にまで入って、
何かを見てきたっていう気迫が伝わってきますし。
僕が共感したのは、
この写真を撮ってる人たちって、
誰かを助けたいとか、そういう思いがあって、
そのために、伝えられていない真実を、
報道として伝えようっていう姿勢なんですよ。
そうですね。
そういうのは、
原発以降、僕もずっとそう思ってて。
テレビとか新聞で言われてることって、
真実とは違うことが多いな、と。
こういうのを見ると、
自分も、その、何かが起こっている現場に行って、
写真を撮りたい、って思うんですよ。
そう、写真て、
文章じゃうまく伝わらないことでも、
一瞬で伝わるっていうのがありますよね。
写真を撮ることで、人の役に立って、
「ありがとう」って言われるようなことっていうのは、
こういうことなのかな、って思って。
そうですね。
一枚の写真によって救われる人もいると思います。
猫の写真を撮って、
「癒されました、ありがとう」って言われるのも、
目指していたことではあるんですけど。
それともう一つ、
「知らなかったことを教えてくれてありがとう」っていうのも、
この先、40代、50代で、
目標にしていきたいと思ってることですね。
(2012年1月 国立「上村邸」にて)
【暮らし百景への一言(上村雄高)】
ヒトゴト主催者の清水さんとはインタビューを受けた時が初対面でした。
清水さんに関する情報は、妻(上村実生)から「すごく行き届いた仕事をする人」という噂だけ。
特に何も予習や予想をせずに、ご本人に会ってみて感じたのは、
・長身で脚長
・目尻にシワがなくて若い
お話をさせていただいて感じたのは、
・人に対して心がオープン
・自由人オーラ
・楽しいことしかしなさそう(←悪い意味じゃないですヨ&あくまでも僕の感じたイメージ)
ということです。えぇ、なんだか好きなタイプの人でした。
そして、僕の話なんぞを聞いていただいたおかげで、これまであまり振り返らずに進んできた人生について、見つめ直すよい機会となりました。
ありがとうございまいた。
ヒトゴト主催者の清水さんとはインタビューを受けた時が初対面でした。
清水さんに関する情報は、妻(上村実生)から「すごく行き届いた仕事をする人」という噂だけ。
特に何も予習や予想をせずに、ご本人に会ってみて感じたのは、
・長身で脚長
・目尻にシワがなくて若い
お話をさせていただいて感じたのは、
・人に対して心がオープン
・自由人オーラ
・楽しいことしかしなさそう(←悪い意味じゃないですヨ&あくまでも僕の感じたイメージ)
ということです。えぇ、なんだか好きなタイプの人でした。
そして、僕の話なんぞを聞いていただいたおかげで、これまであまり振り返らずに進んできた人生について、見つめ直すよい機会となりました。
ありがとうございまいた。
【清水宣晶からの紹介】
上村さんのことは、以前から、奥さんの実生さんに話しを聞いていた。
当時は、レゴを売るネットショップをやっていると聞いていたのに、いつの間にか店をたたんで、今は猫を8匹飼う猫フォトグラファーになっているという。
その、あまりの変転っぷりにむしろ興味を惹かれ、国立にある仕事場におじゃまをして、話しを聞かせていただいた。
上村さんは、レゴショップが好評を博した原因について、たまたまタイミングが良かったと言っていたけれど、それはおそらく韜晦で、上村さんは、どんな仕事をしても、状況を客観的に見極めて的確な判断をくだす、ビジネスセンスを持った人だと思った。それでいて、そのことをみずから明かすようなことがない。
猫写真という領域でフォトグラファーとしての新たな一歩を踏み出した上村さんは、震災後、フォトジャーナリズムという分野に向けて、ゆるやかに舵をとりはじめた。
猫を被写体に写真を撮り続けることで培われたその感性こそは、技術や経験以上に、現場の雰囲気をそのまま切り取るジャーナリズムに必要なものなんじゃないかと思う。
上村さんのことは、以前から、奥さんの実生さんに話しを聞いていた。
当時は、レゴを売るネットショップをやっていると聞いていたのに、いつの間にか店をたたんで、今は猫を8匹飼う猫フォトグラファーになっているという。
その、あまりの変転っぷりにむしろ興味を惹かれ、国立にある仕事場におじゃまをして、話しを聞かせていただいた。
上村さんは、レゴショップが好評を博した原因について、たまたまタイミングが良かったと言っていたけれど、それはおそらく韜晦で、上村さんは、どんな仕事をしても、状況を客観的に見極めて的確な判断をくだす、ビジネスセンスを持った人だと思った。それでいて、そのことをみずから明かすようなことがない。
猫写真という領域でフォトグラファーとしての新たな一歩を踏み出した上村さんは、震災後、フォトジャーナリズムという分野に向けて、ゆるやかに舵をとりはじめた。
猫を被写体に写真を撮り続けることで培われたその感性こそは、技術や経験以上に、現場の雰囲気をそのまま切り取るジャーナリズムに必要なものなんじゃないかと思う。