石井貴士


作家。
2023年現在、累計91冊230万部。
代表作は「1分間勉強法」「やってはいけない勉強法」など。
(2023年11月 長野佐久「スターバックス」にて)

「その他大勢」に正解はない

(清水宣晶:) ん?


おお!
・・どこかな?


(石井貴士:) おーい。


おー、どうもどうも。

突然でごめん。
もしかしたらワンチャンお茶できるかと思って。

午後からキャンプ行くんだけど、
ちょうど今、空いてた。
連絡くれて嬉しいよ。

タイミングが合ってよかった。
あの、窓際のテーブル席が空いたから、
移動しよう。


石井くんは、かなりユニークな人生を歩んでるけど、
最初のキャリア的なことみても、
慶応経済に行って、アナウンサー志望ってのは、
異色な選択だったよね。

珍しかった。
周りは三井住友銀行です、東京海上です、
って言ってる中で、一人だけ地方局のアナウンサーだから。
すごいマイナー路線だったよ。

その、マイナーな道を選んだのは
なんでだった?

僕の場合は、
モテたいってところから始まったんだけど、
東大の考古学部に行きたかったの。

ほんと!?
考古学部ってのは初耳だな。

だから、人生二択だった。
慶応に行ってモテモテの人生を送るか、
東大の考古学部に行って、世捨て人として、
遺跡の発掘をして行きていくか。


考古学で、なんで東大?

東大に、ムー大陸とアトランティス大陸の
研究家がいたのね。

すんごい尖った研究だな。

東大の教授で竹内均さんて人がいて、
ムーとアトンティスを研究してたんだけど、
その後釜が誰もいなかったんだよ
だから、ここの席が空いてる、と思って。

後を継ぐつもりでいったのか。

東大に行ってムー大陸とアトランティス大陸の
研究家になるっていうのが第一志望で、
もしそれが叶わないんだったら、
慶応に行って、チャラくてモテモテの人生を送る、
っていうニ択だった。

かなりギャップのある二択だな。

で、東大落ちたから、
思いっきりチャラチャラしようと。

やるんだったら、
とことん振りきりたいわけね。

でも全然チャラチャラできなくて。
頑張って合コン年50回とかやったけど、
まったく彼女もできなくて。
このままだと人としゃべれなくてヤバい、ってことで
ショック療法で演劇サークルに入って。

ぶはははは!
人前で話す機会を無理やり作ったのか。


そうでもしないと就職できないと思ったんだけど、
そこでも全然演技が上手くできなかった。
そういうときに、逸見政孝さんが亡くなったから、
アナウンサーになろうと。

なにか関係あるの?

逸見さんもモテなかったんだけど、
それを克服するために、
早稲田に行って、アナウンサーになった、
っていう話があって。

根が真面目な人っぽかったからなあ。

そう、真面目な人だったけど、
テレビに出て、自分を振った女を見返すんだ、
ってアナウンサーになったんだよ。
俺も、モテない人生を送ってるけど、
逸見さんの後を継いで、
アナウンサーになって見返してやる、って思って。

(笑)そういうきっかけだったのか。

人としゃべれないのにアナウンス学校に通って、
大学3年の時はめちゃくちゃトレーニングしたけど、
TBSとかは全然ダメで、地方局のアナウンサーになった。

初志貫徹だなあ。
よく実際にアナウンサーになったよ。

慶応経済の中でアナウンサーになったのって、
学年で、僕とあと一人しかいなかった。

そうか、女子アナとはまた違うから、
男子からしたら、人気の就職業種には入らないか。

全然人気じゃない。
でも逆に、レアになったらつぶしがきく、
って途中からメリットだと思うようになった。


そうだよな、石井くんには、
そのレアキャラ精神を至るところで感じるよ。
あえて世間の価値観の逆張りをすること結構あるよね。

めちゃめちゃある。
だって、金融機関に勤めてたら、
30歳で1000万っていってもレアキャラじゃなくて、
その他大勢になるじゃない。

まあ、そうだね。

でも、アナウンサーだとめったにいない。
「その他大勢」に正解はないと思ってるから。

それ、たしかに成功法則とは思うんだけど、
怖さはないの?
メインストリームから外れるってことを
何回かやってるじゃない。

怖さとか全然なくて、
「どっちがモテるか」だと思う。
大手企業のサラリーマンになるよりは、
アナウンサーのほうがレアだからモテるんじゃないかって。

ああ!
なるほど。

みんなと一緒だと安心するんじゃなくて、
モテる方向に進んでることが精神安定剤。

全っ然ブレないな。

でも、実際に
アナウンサーになったらモテなかったんだよ。

ぶはははは!
想定と違った。

違った。
キャバクラに行ったら
「あ、石井アナだ」ってバレるし、
合コンとかで女の子に会っても、
すぐお母さんに言うのね。

そうか。
言いふらされちゃうんだ。


「アナウンサーと会ったよ」って。
そうなると、迂闊に触ることもできない。

どこで何言われるかわかんないな。
反社会的なこともできないし。

女の子がいても突撃できない自分が5年いた。
そんなときに、中谷彰宏さんの本を読んで。
あれ?作家ってモテ放題じゃんって気づいたんだよ。

顔があんまり知られないからね。

そう、同じように表現者で頑張ってるんだけど、
作家って顔バレしないし、
これは「作家」って言ったほうがモテるな、と。

うんうん。

そこで作家っていうレアなほうに行って。
会社を作って起業したのも、なんでかっていうと、
サラリーマンと社長だと、社長のほうがモテるじゃない。

(笑)ほんと、清々しいぐらいに、
全っ然ブレないね。

ブレない。
そこの軸はまったく変わってない。

必勝法マニアだった

前に、高校の同窓会があって、
出席したんだけど、
俺が一番変わっただろうと思ってたわけ。

海城高校時代と比べて。


いい大学入って、安定した大企業に勤める、
っていう人が多数派だから、
一番そこから遠ざかってるのが自分だと思ってたの。
そしたら「一番変わってないのは石井だよな」って言われて。

おおー、
どういう意味で?

「石井は高校時代から必勝法マニアだった」、
って言うのね。

ぶははははは!
それは、すごいよくわかるわ。

大学に受かる必勝法を考えて、
アナウンサーになれる必勝法を考えて、
会社で儲かる必勝法を考えて、
「昔とまったく変わってないじゃん」と。

高校の時からそうだったんだ?


英単語を最速で覚えられる方法とか、
どうやったら世界史で満点とれるとか、
「それしかお前は頭になかった」って。

そういえば、たしかに自分ってそんな感じで、
学年一位のやつに、どうやったら一位になれるのか聞いて、
必勝法を作ろうとしてた。

『一分間勉強法』とかも、まさにその延長だよね。
みんなが効率のいい勉強法を求めてて、
それを体系化するのが石井くんの一番得意なところで、
世の中に求められてることと一致してるんだな。

中学の頃から必勝法ばかり考えて生きてきてるから、
誰かのビジネスを見たときに、
どうすれば社長が楽になって利益が上がるかってのを、
見た瞬間わかるもんね。

石井くんの本質はそこだなと思う。
必勝法を作り出せることこそが、
一番レアなスキルだよ。

コンフォートゾーンの外へ

あとさ、昔っから思ってるんだけど、
普通の人が踏み出さないところに
結構よく行くよなって思う。


衆議院選挙出馬とかね。

そうそう!

コンフォートゾーンの外に行く。

そういうこと、そういうこと。
コンフォートゾーンの外に、
あえて出ようとしてるの?

あえて出ようとしてる。
最近コンフォートゾーンから出たのは、
日焼けサロンだね。

はー、日サロ。
あれってなんのために行くの?

そう、僕も、なんのために行くの?
って思ってた。
でも、モテる研究をしてる人がいて。
その人が「黒くなればモテる」って言うんだよ。

そりゃ、
黒いのが好きな人にはモテるかもだけど。

黒いと、男性性が上がって、
アクティブなんじゃないか、
って勝手に向こうが連想するらしい。

で、行ったの?

行ったよ、日サロ。

なんでもやるなあ!


先週も行った。
日サロってこういうもんなんだ、って。
行ってみないとわかんないじゃん。

まあそうだね。

日サロって、話を聞くまでは考えたこともなかった。
やっぱりコンフォートゾーンの外に出ていかないと。

そこだよなあ。
とりあえずいろいろやってるよね。

やっぱり、新たな体験をどこまで追求するか、
が作家魂だと思う。
他の人がやっていないことを経験するとか、
人のいない通りを通るとかを、
そこに何があるかは求めずに、やってる。

なるほど。
いかに自分自身に未知の経験をインプットできるかの
勝負ってのはあるよね。

やってないって言われると、
やったほうがいいんじゃないの、と思う。
バンジージャンプとかヒッチハイクとかそういうんじゃなくて、
なんか、コンフォートゾーンの外にあるもの。

そうか。
常に自分がやったことないことを試してるんだな。
その魂を持ち続けられてるのが素晴らしいよ。
普通、だんだん丸くなるじゃない。
石井くんはいったいいつ丸くなるんだろうな。

丸くならないね。
まだゲリラを続けてる。

まだロックだしパンクだよ。

やっぱり、無茶なこと言わないと、
人が協力してくれないってのはあると思う。

ああ!それはあるな。
昔に、オレがシステム開発で関わってたプロジェクトでも、
割りといつも無茶な目標掲げてたもんね。
実際にそこまでは届かないにしても、
目標が高いことで、近くまで行ってしまうのを見てきたよ。

経験とか、使うお金が増えたことで、
昔は無茶だったことが、無茶じゃなくなってきてる。
だから最近は、もっと無茶なことを探さなきゃダメだって思ってる。

イシイタカシが大本命

そういえば、弟さんて元気にしてる?
一緒に麻雀やったことあったけど、面白い人だったなあ。


元気にしてるよ。
先見の明がやっぱりスゴイから、
不動産で、10階建てのマンションを1棟建てで買って、
その一番上に住んでたんだって。
最近は一戸建てにして、エアビー(Airbnb)で自動化して
外国人向けに貸してる。

やっぱりやってることが違うな。
石井くんは、不動産とか投資には興味なかったの?

いまだに興味ないね。

あ、そう!

まったくない。
僕は、不動産は一番リスクあると思ってる。
南海トラフとか首都直下地震がいつ起こるかわからないし。

株とかはどう?
現物資産じゃないやつ。

そっちのほうがまだ興味あるけど、
全世界株式に投資するんだったら、
自分の事業に投資したい。

なるほど。

Facebook広告だけでも3倍ぐらいになるんだから。
確実に当たるナリタブライアンの単勝に入れたほうがいい。

自分のビジネスが本命なんだ?
すげー自信だな!


テイエムオペラオーぐらいの本命。
何回かコケたとしても、
一個あたれば、一発で取り返せると思ってるから。

博打打ちだよそれは。
自分でやってる事業もかなり不確実だと思うけどな。
それを本命と思えるってのはすごいよ。

イシイタカシが大本命だと思ってる。
だから自分に全額賭けられるんだと思う。

(笑)イシイタカシのほうが、
全世界株式よりリターンがいいっていう
確信があるんだな。


株じゃせいぜい5%しか返ってこないけど、
自分に投資したら倍にはなる。
だったら全部自分にフルベットしたほうが
いいに決まってるじゃん。

ほんと面白い。
ほんと変わってない。
今日は会えてよかったよ。
(2023年11月 長野佐久「スターバックス」にて)

清水宣晶からの紹介】
石井くんとは、彼が2002年に起業をした時、その会社のホームページを作った時からのつきあいだ。
とても注文が細かくて、一日にメールのやりとりを100往復以上したこともあり、ものすごい人に出会ったという嬉しさがあった。

mixiが現れた当時、それを超えるSNSを自前で作ろうとして何千万円もの借金を抱えたと思えば、『一分間勉強法』が大ブレイクして、借金をチャラにした。

一般的な常識を飛び抜けた考えを持ち、しかもそれを臆せずに実行する。
天才肌とは、こういう人のことを言うんだろうと思う。

何かと言動が極端なところが目立つけれど、根の部分はものすごく真面目で、律儀で礼儀正しく、常識がある人だ。
待ち合わせをすると、約束の時間よりもかなり早くから到着して待っているし、行動もレスポンスも、ものすごく速い。

突飛な発想力があるだけではなく、そういう基本的な部分の能力がしっかりあるからこそ、ビジネスをやっても実績を出すことが出来ているのだろうと思う。

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