クラリスブックス

| 東京都世田谷区、下北沢の一番街商店街にある古書店。 取扱いジャンルは哲学思想・文学・アート・デザイン・写真・ファッション・SF・サブカルチャー関係。古本の買取も随時受付中。 店主の高松徳雄は、古書の街、東京神田神保町の古書店にて10年以上修行し、地元の下北沢で古本屋を開業すべく、2013年に独立。 地域密着の古本屋を目指し、今後はイベントや勉強会なども開催予定。 http://clarisbooks.com/ 東京都世田谷区北沢3-26-2 2F info@clarisbooks.com 03-6407-8506 【営業時間】平日12:00-20:00、日曜祝日は19:00まで 【定休日】月曜日(月曜日が祝日の場合は営業) |
(2014年2月 下北沢「クラリスブックス」にて)
クラリスブックスが生まれるまで
| 高松 | じゃあ、ちょっと、 話しをする前にお菓子を買っていこうか。 ![]() |
| 石村 | これ美味しいよね。![]() |
| 清水 | なにこれ? 「さくさくぱんだ」? |
| 高松 | いや、バカにしちゃいかんですよ。 これは、なかなかいい。 しかも、小分けになってるから、 自分のペースで食べやすいし。 |
| 清水 | ん・・わかった。 ここで、カフェラテも買っていこうかな。 |
| 石鍋 | それなら、「Bear pond Cafe」っていう 美味しいお店がありますよ。 |
| 全員 | (珈琲を買い出し)![]() |
| 清水 | じゃあ、始めましょうか。 よろしくお願いします。 ![]() |
| 三人 | よろしくお願いします。 |
| 清水 | 最初に、紹介を兼ねて、 3人それぞれの得意ジャンルっていうのはあるの? |
| 高松 | それはあるね。 鍋ちゃんは写真・ファッション・美術関係。 |
| 石鍋 | ![]() 前の職場で、 美術関係とか写真集を扱うフロアにいたので。 |
| 石村 | ![]() 私は、文学とか読み物系を、 主に見てます。 |
| 高松 | ![]() で、僕は、哲学・思想関係がメイン。 そういうのが、みんな、なんとなくありつつも、 他の分野もそれなりに詳しい、っていう感じかな。 |
| 清水 | 「クラリスブックス」っていう名前は、 決まるまでに、結構考えた? |
| 高松 | 名前は、ものすごく考えたね。 鍋ちゃんに、まず店の名前を考えよう、って言って。 でも、「クラリスブックス」っていう名前は 最初の頃に出てたね。 で、また最終的に戻った感じなのかな。 |
| 清水 | いろいろ考えた末に、一周した? |
| 高松 | そう、結局、一周した。 最初に候補にあったのは「プラトンブックス」。 |
| 清水 | 「プラトンブックス」! |
| 石鍋 | 結構いい名前ですよね。 |
| 高松 | あと、石鍋先生発案の 「ナイスブックス」ってのもあったね。 |
| 清水 | ぶはははは! プラトンからいきなり、 軽い感じになっちゃってるけど。 ![]() |
| 高松 | 「一晩考えて、思いつきました!」って、 自信を持ってプレゼンしてくれたんだけど、 うん、まあそれはやめとこう、と(笑)。 |
| 石鍋 | いいの思いついても、 ドメインを調べると既に取られちゃってたり するんですよね。 |
| 清水 | あ、「nicebooks.com」は もう取られちゃってました? |
| 石鍋 | いや、ナイスブックスはもう、 調べる以前の段階で却下で・・。 |
| 高松 | あとは、クレイドルブックスとか、 サラバンドブックスとか、候補が出たんだけど、 既にアメリカにそういう出版社があったんだよね。 で、やっぱりクラリスブックスがいいんじゃないか、と。 |
| 清水 | クラリスっていうのは、 「羊たちの沈黙」から来てるんだよね? |
| 高松 | そう、クラリス・スターリングから。 強くて、美して、知的な存在、ということで、 そういうお店にしたいなっていう思い入れもあったりして。 ![]() |
| 石村 | なんで名前がクラリスなのかとか、 マスコットキャラが羊なのかとかが わかりにくいのは、 ミステリアスでいいな、と思う。 |
| 高松 | うん、それで、なんでだろうって 名前のことを聞いてくるお客さんもいるし、 話しのきっかけになるから。 「カリオストロの城」からきた名前と思う人も多いんだけど、 そっちじゃないんですよ、って話しをしたり。 |
| 清水 | 「プラトン」とかだと、 もう、想像の余地がないからね。 ![]() ところでこの、「さくさくぱんだ」って、 むっちゃくちゃ旨いね! |
| 石村 | でしょ? |
| 清水 | 食べてみるまでは、 子ども向けのお菓子だろうと思ってたけれど。 |
| 石村 | 「さくさくぱんだ」を笑う者は・・ |
| 清水 | 「さくさくぱんだ」に泣くね。 すみませんでした。 |
古本屋という特殊な業態
| 清水 | クラリスブックスは、twitterとかブログで、 すごく頻繁に情報発信をやってるよね。 |
| 高松 | そう、3人とも文章書くのが好きだし、 そこは、お店を始めた時から期待してたところはあった。 ![]() どんなテーマでもいいんだけど、 自分たちが、どういう本をいいと思っているか、 クラリスブックスとしての意見を発信していくことを 続けていきたい、っていうのはある。 それで、本当に本の好きな人に伝わればいいな、と。 |
| 清水 | それは、きっと伝わるよね。 やっぱり、本を好きな人が書く文章と、 そうじゃない文章って、伝わるものが違うからさ。 |
| 高松 | そうだよね。 そうすると、おのずと、 同じものをいいと思ってくれる人が集まる お店になるんじゃないかなと思っていてね。 |
| 清水 | そういう、実際に人が集まれる、 リアルな場所があるってのはうらやましい。 |
| 高松 | そう、だからとにかく、 お店を開きたかったんだよね。 いろいろな人が来てくれて、話をすることができるし。 どれだけネットでコミュニケーションがとれるっていっても、 実際に人と会って話すのにはかなわないなって思うから。 この場所をつかって、イベントとか、 勉強会もやっていきたいしね。 |
| 清水 | 3人は、もともと、 神田の同じ古本屋で仕事をしていた同士だけれど、 そのことの良さっていうのは、やっぱりある? |
| 高松 | それは、ものすごくたくさんある。 たとえばね、いきなり、 「私、古本が好きです!」っていう大学生の子が、 バイトをやりたいって来ても、残念ながら、 かなり教えないと、全然動けないと思うんですよ。 ![]() |
| 清水 | あ、そういうものなんだ!? |
| 高松 | 教えてもね、古本屋ってちょっと特殊な業態で、 新刊の本屋みたいに、レジでピッピッ、 800円です、ってわけにいかない形になってるから。 古本屋さんと一言でいっても、 一軒一軒やり方が違ったりするんだよね。 |
| 清水 | そうか、その点、 同じお店で働いていた同士ってのは、 トレーニングも必要ないし、 やり方も共有できてるし。 |
| 高松 | そう! 「これを、あれして」「じゃ、やっときます」 だけで話しが伝わるんですよ。 |
| 清水 | ツーカーだね。 |
| 石村 | たとえば、カバーとか値札の付け方でも、 一緒に話すとどんどんアイデアが出てくるものね。 |
| 高松 | そう、値段の表示の仕方一つとっても、 古本屋によっていろいろなやり方があって。 |
| 清水 | よく、裏表紙をめくったところに、 鉛筆で値段が書いてある、ってあるよね。 |
| 高松 | そのやり方してる古本屋は多いんだけど、 本に直接書き込むっていうのはやりたくなかったし、 値段の紙をビタッて糊で貼るっていうのも、 汚くなっちゃうからやりたくなかった。 ![]() で、この、スリップっていう紙を挟むやり方で クラリスブックスではいこう、って決めたんだね。 こういうのも、3人一緒にやってきたから、 すぐに意識を合わせられるっていうのはある。 |
| 清水 | なるほど。 |
| 石鍋 | 内装の設計についても、 仕事の時には、こういう作業があるから、 こういう作りが必要だ、とかがわかるし。 |
| 高松 | そういうことを考えると、たとえば、 「三省堂で働いてました」っていう人は、 リブロに行ったらすぐに仕事ができるかもしれないけど、 古本屋だと全然、やることが違ってきちゃう。 |
| 清水 | なるほどなあ。 逆に、古本屋で蓄積したノウハウってのは、 なかなか他の業種には応用しにくいってことだね。 |
| 石村 | そう、つぶしがきかない(笑)。 |
| 清水 | じゃあ、古本屋を始める場合、 同じ店で働いていた同士が一緒に仕事するっていうのは、 かなり理想的な形なんだね。 |
| 高松 | そう、それはベストだと思う。 |
| 石鍋 | 一人だとたぶん、 いろいろ妥協しながら前に進めて いっちゃったんじゃないですかね。 |
| 高松 | まあいいや、って感じでね。 |
| 石鍋 | ![]() 手前味噌ですけど、 3人で話し合いながら進めたことで、 いいものが作れたんじゃないかって思ってますね。 |
| 石村 | だから、オープン前の、本の準備に関しては、 ものすごく早かったよね。 |
| 高松 | 値段をつけるにも、やっぱり、 ネットで調べて相場を見ればいい、 っていうものでもなくて、 ウチの本屋では、どういう本をどの値段で出す、 っていう感覚はあるわけなんだよね。 そこはお互い共有出来てるから、上手く動いてるなと思う。 |
本に値段をつけるということ
| 清水 | 不思議に思ってたことがあるんだけど、 買い取りとかで、お客さんのところに行くような時、 その場で値段の判断をしないといけないわけでしょう。 そういうのって、その場で、瞬時に判断するの? |
| 高松 | そうだね。 どうしてもわからない場合は、その場で調べたり、 電話して確認したりもするんだけど、 本ってのは、日焼けとか固有の状態もあるから、 基本的には、本そのものと向き合うしかない。 |
| 清水 | 本そのものと向き合う! |
| 石村 | 見に行って、「これは見たことないな」 っていう本は、やっぱり何か、 特殊な価値とか珍しさがある本が多い。 |
| 高松 | 石村さんは、もう20年やっていて、 だいたいの本は見たことがあるからね。 |
| 石村 | でも、それも難しくて、 自分の勘だけに頼ってやっちゃうと、実は、 1ヶ月前に再販されてるものだったりすることもあるから。 ![]() ちょっと前にも、サンリオSF文庫に、 ディキンスンの「生ける屍」っていう本があって、 3万円ぐらいの相場だったんだけど、 それが、再販されたんだよね。 |
| 清水 | あ、そうすると、ガクッと 価値が下がってしまうんだね。 |
| 石村 | そう、同じ訳のものだから。 |
| 高松 | だから、過去の経験だけじゃなくて、 今の出版界の状況も見ないとダメなんだね。 昔の単行本が文庫化されるってことが、 哲学とか思想の分野には、よくあるから。 |
| 清水 | たしかに、内容が一緒のものだったら、 新刊でも全然問題ない、って人も多いだろうね。 |
| 高松 | 文学に関しては、初版に価値が出るから、 ジャンルによっても違うんだけれど。 そこがね、ほんとに、値付けに関しては、 1~2ヶ月で習得出来るようなものでもないし、 難しい。 |
| 清水 | 奥が深いなあ。![]() |
| 石鍋 | 写真とか美術とかファッションのほうは、 あまり相場が確立されていないことも多いです。 洋書の場合は特に、文学の場合と違って、 見たことがないものもけっこう多くて。 |
| 清水 | それは、数が多すぎるから? |
| 石鍋 | そうですね。 日本で全然知られてない人も多いですし。 だから、写真集の方面は、見た目で、 この前売れた本と似てるから、 このぐらいの値段で売れるんじゃないか、とか。 |
| 清水 | ああ、値付けの方法論が、 文学とかとまったく違うわけですね。 |
| 高松 | そう、写真集みたいに、 読む本じゃなくて、見る本に関しては、 日本語である必要はないから、 世界中のものが流通するんだね。 そうすると、見たことがないものが多い。 そういうジャンルはもう、自分の目を信じるしかないね。 |
| 石鍋 | どっちも、楽しいですけどね。 |
| 高松 | それがやっぱり、面白いところでもあるかなあ。 もちろん、失敗もたくさんあるけど、 逆にすごい良かったって思うこともあるし。 ![]() |
| 石鍋 | なんにせよ、適正な値段で買えて、 適正な値段で売れたってことが、 後でわかった時には、すごい嬉しいですね。 |
| 清水 | なるほど・・ そういう喜びがあるのかあ。 |
| 石村 | 矛盾した言い方になるんだけど、 自分の好きな本を、安く売りたくないっていう気持ちも、 あまり高く売りたくもないっていう気持ちもある。 |
| 高松 | それはあるね。 常にこのお店に、きちんと、 いい本を置いておける値段で置いておきたい。 安すぎると、わーってすぐに無くなっちゃうし、 高すぎると買いたくても買えなくなっちゃうから。 そこが一番、古本屋として難しい。 |
| 清水 | そうか、本の値段の決め方っていうのは、 結構、悩ましいんだろうね。 |
| 石村 | 経済とか、法律とか、 専門のジャンルを持っている店っていうのがあって、 そういう店の本って、お客さんからすると、 「ちょっと高いよね」っていうことが多いんです。 高くないと、専門の品揃えが出来ないわけなんだよね。 |
| 高松 | ![]() そう、本当に置きたいものに関しては、 値段がちょっとは高くなる。 そこのバランスは難しいけどね。 |
| 清水 | あ、そうなんだ!? |
| 石村 | お客さんからわかりにくいところっていうのは、 そこだと思うんですよ、いつも。 |
| 高松 | 自分たちの棚っていうのを維持するためには、 ある程度、責任を持った価格にする必要はあるね。 |
| 清水 | なるほどなあ。 専門のジャンルだからこそ、 安売りでバッと売る、っていう売り方はしないんだね。 |
| 石鍋 | 本当に好きで見に来ているお客さんは、 amazonで調べて100円単位の違いを比較して買うわけじゃなくて、 古本屋めぐりの中での出会いを大切にしているから、 見つけたお店で買う、っていうことが多い。 そういう人を信じて店をやりたいって思いますね。 |
大事なのは仕入れ
| 高松 | ちょっとここで、休憩を入れて、 「さくさくぱんだ」を補充しましょう。 ![]() |
| 石村 | 極論を言ってしまうと、 本が売れることもほんと大事なんだけど、 さらに大事なのは、仕入れなんですよね。 |
| 清水 | 質のいい本を仕入れられるか? |
| 高松 | そう。 仕入れた本をいかに捌くか、 っていうノウハウはわかっているから、 とにかく、まず、いい本を仕入れたい。 |
| 清水 | 捌き方っていうのは、 かなりノウハウが必要そうだね。 |
| 高松 | この本はお店に置いておいてもしょうがないから 専門の市場に出した方がいいだろう、とか、 ネットのほうが売れるだろう、とか。 さっき言ってた、クラリスブックスで 積極的に情報を発信しているっていうのは、 店に来て本を買ってもらいたいから、 っていうこともあるんだけど、 売ってもらいたいから、っていうのも、かなりある。 |
| 清水 | ああ、そうなんだね。 たしかに、この本入荷しました、とかって情報を発信してると、 興味を持った人が買いに来るだけじゃなくて、 この古本屋は、こういうジャンルの本を買ってくれそうだな、 っていう雰囲気が伝わるからね。 |
| 石村 | 前の本屋の時もそうだったけど、私は、 買ったものの仕分けをしている時が一番楽しいかな。 これは市場で、これはお店、とか。 ![]() |
| 高松 | それはそうだね。 お店に置こう、ってことになった本をキレイにして、 じっくり値段をつけるっていう作業も楽しいし。 |
| 清水 | 今、特に買取りを求めているジャンルってある? |
| 高松 | やっぱり、哲学・思想関係ですね。 結構、古本屋の中でも専門店が多いジャンルで、 流行りすたりがあんまりないし、王道というか。 あんまりまだ、在庫が豊富じゃないんだけれど。 ![]() |
| 石鍋 | 最近は美術書がだいぶ、 買い取り依頼が増えてますよね。 |
| 高松 | それは、「クラリスブックス」っていう 名前のおかげもあるかもしれない。 女の人でも来やすい感じがある気がするし、 名前ってやっぱり重要だなって思って。 |
| 清水 | 「プラトンブックス」だったら、 哲学関係の買取り依頼がたくさん来たんじゃない? |
| 高松 | そしたら、プラトン全集はわんさか来てたかもしれないけど。 それ以外、来なくなる可能性あるよね(笑)。 買い取りって、基本的には受け身なんだよね。 だから、ある程度こだわりを持ちつつ、 柔軟性がないとやっていけない。 |
| 清水 | 柔軟性っていうのは、 どういうこと? ![]() |
| 高松 | たとえば、クラリスブックスではあんまり 建築の本って扱ってないんだけど、 すごくいい本がダンボール30箱入ってきちゃった、と。 そしたら、多少は建築コーナーを作る柔軟性が求められる。 |
| 清水 | なるほど、なるほど。 |
| 高松 | それを、「ウチは建築は要らないから」って、 断っちゃうのはもったいないし、 せっかくお店を信用して売りに来てくれた以上は、 あまり扱いがないジャンルでも、ちゃんと調べて、 いい本はきっちり買い取りたいって思う。 |
| 石鍋 | そうやってコーナーを作ってみると、 「あ、こういう本が売れるんだ」っていうことがわかってきて、 その分野の仕入れが増えることにもなるから、 間接的には、ちゃんと結果につながる。 |
| 高松 | そうだね。 まだ始めて2ヶ月ぐらいで、ちゃんと確立されてないけど、 扱う分野もなんとなく決まってきてるから、 そうすると、積極的に買えるようにはなるよね。 |
| 清水 | 建築コーナーを新しく作ると、それと引き換えに、 何かのコーナーがなくなるってことだよね? |
| 高松 | そう、物理的なスペースの制限がやっぱりあるから、 それではみ出した本は、一括して市場に出したりするね。 |
| 石村 | 結構、お店で直接売るのとは別のルートもあって、 即売会とかフリーマーケットに出したりもあるし。 |
| 清水 | それやって、余った本を市場に出してるとさ、 ババ抜きのババみたいに、 どこに出しても他所に回されて売れ残る本てのも あるんじゃない? |
| 高松 | あるある。 もう、本当にどうしても売れない本っていうのは、 残念ながら、処分されてしまうことになるんだけど、 でも、そこに行くまでにいろんな場所があります。 市場もいろんな種類のがあって、もう完全にダメだ、 ってなるまでに何箇所か試すんだよね。 |
| 石鍋 | その本を必要としている誰かが見つけてくれる、 と信じて。 ![]() |
| 石村 | レイアウト替え、 っていうのは結構マメにやりたいね。 |
| 清水 | それは、どうして? |
| 石村 | お客さんが1ヶ月後にまた来て、 前と同じ本しかない、ってなったら面白くないじゃない。 |
| 高松 | 大規模改造じゃないよ。 古本屋のイメージとして、なんか、ホコリかぶって、 ずっと同じ本があって、っていうのがあると思うんだけど、 やっぱりそれは面白くないだろうっていうのもあるし。 |
| 清水 | そうか、たしかに、 来るたびに新しい発見がある本屋っていうのは、 また行こうって気になるね。 |
| 高松 | 逆に、それができてないと、 うまくまわってないってことでもあるから、 頻繁に入れ替えはやりたい、ってことだよね。 |
| 石鍋 | あとは、新しく入ってきたものじゃなくても、 今ある本を何冊か抜き出して、見せ方を変えて 特集を組んだら売れる、っていうこともあったり。 |
| 清水 | なるほど。 TSUTAYAとかでも、レンタルDVDでやる見せ方だね。 ![]() |
| 高松 | そこは、新刊本屋のほうが積極的にやってると思う。 数もたくさんあるし、工夫した売り方っていうのも わかってるし。 |
| 石鍋 | ただまあ、新刊本屋だと、 新刊しか扱えないっていう。 |
| 清水 | 古本屋のほうが、出来ることの幅は広い気がするな。 そもそも、値段を自由につけられるっていうのは 大きいだろうし。 |
| 高松 | そう、あとは、たとえば、 明治時代の本と、平成の本を並べて一緒に置く、 とかっていうことも出来るわけだから。 そこは古本屋ならではの工夫の仕方があると思う。 |
本のことはお客さんから教わる
| 清水 | 自分のお店に置いてある本って、 どのぐらい読んだことがあるものなの? |
| 高松 | 石村さんなんかは、半分以上読んでるんじゃない? |
| 石村 | いやいや、ほとんど読んだことがないって 言ったほうが正しいと思う。 ![]() |
| 清水 | いろいろな本について、 読んだことはないけどなんとなく知っている、 っていうことのほうが重要なのかな。 |
| 高松 | そう! まさにそういうことだね。 |
| 石村 | こういう仕事をしていなかったら、 知らなかった本はいっぱいあるだろうと思う。 |
| 高松 | 本が売れていく様を見ているから、 いつもいい雰囲気のお客さんが買っていく本、 とかあるわけだよ。 |
| 石村 | そうだね。 お客さんから教わってるところは多いと思う。 |
| 清水 | あの人の目に止まった本なんだから、 いい内容のものに違いない、とかって、 現場で感じるわけだね。 |
| 高松 | お客さんが選んで買ってくれる様子を見るとか、 本の出入りの量を見るとか、 そういう、経験の蓄積だよね。 だから、さっきの質問の答えでいうと、 本の中身は読んでなくても、背表紙はわかる、 っていう感じ。 |
| 清水 | なるほど。 |
| 高松 | この、「世界幻想文学体系」なんかさ、 全部で60巻ぐらいあって、自分で読んだことはないんだけど、 やっぱり、置くとすぐ売れるな、とかわかるし。 ![]() 特定の分野については、確実に、 僕らよりも、お客さんのほうが詳しいわけだよね。 それがどれだけいい本かっていうことについては、 お客さんのほうがよくわかってる。 それを値段に換算するのは僕らの仕事なんだけど。 |
| 清水 | 石村さんは、ほとんどの本は、 名前や背表紙を見たことがある、 っていう感じなんですか? |
| 石村 | そうだね、どこかしらで見たことはある、 っていうものがほとんどだと思う。 |
| 清水 | これだけたくさんの本があるのにね。 |
| 高松 | 文学の本はそれでも、数に限りがあるから。 鍋ちゃんがやっているもののほうが難しいね。 |
| 石鍋 | ![]() そうですね、海外の写真集なんかは、 見たことないものばっかりなので。 |
本を売るのが一番いい仕事
| 清水 | クラリスブックスのことを説明する時に、 こんなお店です、って言ってることはある? |
| 高松 | どういうお店ですかって言ったら、 まあ、当たり前なんだけど、 私たちが厳選した本を売るお店です、 っていうことになっちゃうのかな。 |
| 清水 | せっかくだから、3人それぞれのオススメ本を、 お店の中から1冊ずつセレクトしてもらってもいいかな? |
| 三人 | (それぞれ、本を探しはじめる)![]() |
| 高松 | ![]() 『プラトン(I) 生涯と著作』(田中美知太郎/岩波書店) |
| 石村 | ![]() 『別れる理由』(全3巻)(小島信夫/講談社) |
| 石鍋 | ![]() 『カフカ』他、ロ・ロ・ロ・モノグラフィー叢書 (クラウス・ヴァーゲンバハ/理想社) |
| 清水 | うーむ、まったく読んだことない本ばかりだ。 他にもオススメを聞きたい方は、お店に来ていただくということで。 |
| 高松 | 本が売れると、やっぱり嬉しいんだよね。 単純に、本を読む人が増える、っていうだけで。 世の中には、いろんな物を売る仕事があるけど、 僕は、本を売るのが一番いい仕事だと思ってるんですよ。 |
| 清水 | おお! |
| 高松 | 逆に、最悪なのが、 麻薬を売るとか、核爆弾売るとかね。 |
| 石村 | 死の商人。 |
| 高松 | どんな分野の人でも、本は読むじゃないですか。 あらゆる人に、本を通じていろんなことを提供出来るっていう、 すごい人間的な仕事だな、いいなって、つくづく思って。 |
| 清水 | たしかに、すべての人に関われるよね。 どんな人にでも、関わりのある本は出ているから。 |
| 高松 | そういう憧れがあったから、ずっと昔から、 古本屋を作りたいっていう想いがあったんだろうね。 ![]() お店を始めたっていっても、 まだまともに回っていないけど、 これで生活が出来るようになれば、幸せ者だなと。 僕はね、一番いい仕事をしてるなって、 自信を持ってますよ。 |
| 清水 | それは、いいなあ。 そう言える仕事をしてるってのは、 ほんとに幸せなことだよ。 |
(2014年2月 下北沢「クラリスブックス」にて)
【清水宣晶からの紹介】
古本屋といえば、薄暗い店内にホコリをかぶった本がぎっしりと敷き詰められている、といったイメージがあるかもしれないけれど、クラリスブックスを見れば、その認識は一変するに違いない。
下北沢という立地に合った、陽の光が柔らかく射しこむ明るい店内には、選び抜かれた魅力的な本たちがキレイに並べられている。
もともと、神田の同じ古書店で働いていた3人の息はピッタリと合っていて、文化祭の準備をしているクラスメートのような楽しげな雰囲気の中で、いつもてきぱきと動き回っている。
本のことを話し始めると、いつまででも話題は尽きず、本当に嬉しそうな笑顔を見せる。こういう店員たちが作っている本屋には、同じく本好きの人たちが自然と集まってくる雰囲気があるものだ。
今回、「ヒトゴト」では初めて、「人」ではなく「店」を主役にしてお話しを聞かせてもらった。
そのことにあまり違和感が無かったのは、この、手塩にかけて大事に育てられている古本屋に、人間に対して持つのに近い愛着を感じたからだろうと思う。
古本屋といえば、薄暗い店内にホコリをかぶった本がぎっしりと敷き詰められている、といったイメージがあるかもしれないけれど、クラリスブックスを見れば、その認識は一変するに違いない。
下北沢という立地に合った、陽の光が柔らかく射しこむ明るい店内には、選び抜かれた魅力的な本たちがキレイに並べられている。
もともと、神田の同じ古書店で働いていた3人の息はピッタリと合っていて、文化祭の準備をしているクラスメートのような楽しげな雰囲気の中で、いつもてきぱきと動き回っている。
本のことを話し始めると、いつまででも話題は尽きず、本当に嬉しそうな笑顔を見せる。こういう店員たちが作っている本屋には、同じく本好きの人たちが自然と集まってくる雰囲気があるものだ。
今回、「ヒトゴト」では初めて、「人」ではなく「店」を主役にしてお話しを聞かせてもらった。
そのことにあまり違和感が無かったのは、この、手塩にかけて大事に育てられている古本屋に、人間に対して持つのに近い愛着を感じたからだろうと思う。














































第297話 鴻野祐
第296話 吉崎亜紗子
第295話 古瀬正也
第294話 篠原祐太
第293話 田島由香子
第292話 山崎繭加
第291話 小金沢裕之
第290話 青山光一
第289話 高桑雅弘
第288話 久保田光
第287話 岩上健太郎
第286話 堀場百華
第285話 栗林宏充
第284話 マツダミヒロ
第283話 木下英一
第282話 白井康平
第281話 在賀耕平
第280話 太田泰友
第279話 柄沢忠祐
第278話 鮏川理恵
第277話 伊藤大地・麻里子
第276話 金澤金平
第275話 近谷浩二
第274話 岡田信一
第273話 大野佳祐
第272話 吉田マリア
第271話 齋藤志穂
第270話 富岡直希
第269話 中村尚哉
第268話 塩川浩志
第267話 篠原憲文
第266話 金子久登己
第265話 大島亜耶
第264話 上山光子
第263話 日野秀明・熊谷祐実
第262話 山田貴子
第261話 渡辺正寿
第260話 桑原大輔・あやこ
第259話 田原さやか
第258話 高野慎吾
第257話 安久都智史
第256話 堺大紀
第255話 塚原諒
第254話 鈴木優介
第253話 藤原みちる
第252話 濱野史明
Mike Davis
第250話 松本菜穂
第249話 大竹恭子
第248話 前村達也
第247話 あや
第246話 須田高行
第245話 福原未来
第244話 古谷威一郎・育子
第243話 井出天行
第242話 吉澤希咲子
第241話 竹内真紀子
第240話 熊本敦子
第239話 飯塚悠介
第238話 ハン・クァンソン
第237話 山本勇樹
第236話 吉川徹
第235話 室伏那儀
第234話 石川伸一
第233話 北幸貞
第232話 石田諒
第231話 岡澤浩太郎
第230話 久保礼子
第229話 永富さおり
第228話 Simeon
第227話 吉田岳史
第226話 茂木重幸
第225話 向井朋子
第224話 大槻美菜
第223話 五十嵐昭順
第222話 山川陸
第221話 小林まみ
第220話 木下史朗
第219話 縄
第218話 ナカイ・レイミー
第217話 岩瀬直樹
第216話 カトーコーキ
第215話 服部秀子
第214話 東孝典
第213話 一戸翔太
第212話 柳澤拓道
第211話 りょうか
第210話 安藤雅浩
第209話 篠塚光
第208話 依田昂憲
第207話 森村ゆき
第206話 大北達也
第205話 伊勢修
第204話 中村里子
第203話 柳澤龍
第202話 細川敦子
第201話 山岸直輝
第200話 中澤眞弓
第199話 高野ゆかり
第198話 四登夏希
第197話 森田秀之
第196話 山﨑恭平
第195話 豊田愛子
第194話 金山賢
第193話 坂本正樹
第192話 江原政文
第191話 マツダミヒロ
第190話 おぎわらたけし
第189話 番匠健太
第188話 高塚裕士
第187話 森田藍子
第186話 黒澤世莉
第185話 橘田昌典
第184話 森村茉文
第183話 梶原隆徳
第182話 松本祐樹
第181話 中村元治
第180話 小園拓志
第179話 あらいみか
第178話 麻生沙織
第177話 豊田陽介
第176話 出口治明
第175話 森岡真葵子
第174話 阿部翔太
第173話 多苗尚志
第172話 石井貴士
第171話 田中美妃
第170話 井手剛
第169話 ひらつかけいこ
第168話 住田涼
第167話 松田大夢
第166話 藤田伸一
第165話 田口師永
第164話 大野佳祐/豊田庄吾
第163話 ウサギノネドコ
第162話 小野寺洋毅
第161話 はる@よつば
第160話 森村隆行
第159話 篠原祐太
第158話 ナカムラケンタ
第157話 大野雅子
第156話 クラリスブックス
第155話 紀乃のりこ
第154話 川島優志
第153話 木村孝・真由美
第152話 佐藤明日香
第151話 大槻美菜
第150話 吉村紘一
第149話 森村ゆき
第148話 辰野まどか
第147話 大橋南菜
第146話 アラ若菜
第145話 宮原元美
第144話 源侑輝
第143話 山本慎弥
第142話 熊崎奈緒
第141話 山中思温
第140話 徳永圭子
第139話 木戸寛孝
第138話 上村実生
第137話 吉田秀樹
第136話 平世将夫
第135話 杉なまこ
第134話 田村祐一
第133話 小橋賢児
第132話 竹沢徳剛
第131話 草野ミキ
第130話 藤沢烈
第129話 竹田舞子
第128話 KERA
第127話 石神夏希
第126話 山本恭子
第125話 吉村紘一
第124話 小原響
第123話 小笠原隼人
第122話 鈴木教久
第121話 物井光太朗
第120話 山本大策
第119話 中村真広
第118話 柳澤大輔
第117話 菊池大介
第116話 岩村隆史
第115話 大嶋望
第113話 今井健太郎
第112話 高橋政臣
第111話 栗田尚史
第110話 上村雄高
第108話 野口恒生
第107話 内野徳雄
第106話 森村泰明
第105話 中村洸祐
第104話 竹下羅理崇定部
第103話 田中美和
第102話 本田三佳
第101話 門松崇
第100話 浅見子緒
第099話 たきざわまさかず
第098話 大野佳祐
黄昕雯
第096話 山本達夫
第095話 本田温志
第094話 内田洋平
第093話 沢登理永
第092話 辰野しずか
第091話 マツダミヒロ
第090話 宮坂善晴
第089話 大久保有加
第088話 谷澤裕美
第087話 笠井有紀子
第086話 高杉なつみ
第085話 菅野尚子
第082話 小座間香織
第081話 山口夏海
第080話 藤田伸一
第079話 森田英一
第078話 新井有美
第077話 神田誠
第076話 紺野大輝
第075話 花川雄介
第074話 間庭典子
第073話 木村由利子
第072話 有紀天香
第071話 山崎繭加
第070話 佐藤孝治
第069話 金澤宏明
第068話 山田康平
第067話 西野沙織
第066話 川端利幸
第065話 岩下拓
第064話 清水宣晶
第063話 高橋慶
第062話 山本麻子
第061話 木村孝
第060話 田島由香子
第059話 石井英史
第058話 巻山春菜
第057話 多苗尚志
第056話 梅沢由香里
第054話 西村友恵
第053話 山口絵美
第052話 高木大
第050話 武藤貴宏
第049話 高橋早苗
第047話 清水元承
第046話 貴田真由美
第045話 伊藤敦子
第044話 シミズヨシユキ
第043話 武藤正幸
第042話 木村音詩郎
第041話 中村文則
第040話 野口幸恵
第039話 深森らえる
第038話 貫名洋次
第037話 黒澤世莉
第036話 大澤舞理子
第035話 石井貴士
第034話 高橋章子
第033話 和田麗奈
第029話 佐々木孝仁
第028話 縄手真人
第026話 五十川藍子
第024話 石田直己
第023話 鶴田玲子
第022話 杉原磨都美
第021話 石倉美穂
第020話 工藤妙子
第017話 石井千尋
第016話 見市礁
第013話 滝田佐那子
第012話 岡田真希子
第011話 田中直美
第008話 今西奈美
第006話 もがみたかふみ
第004話 佐藤愛
第003話 岩崎久美
第002話 田中藍
第001話 和田清華
第002回公開インタビュー
第002回ワークショップ
第001回ワークショップ