番匠健太

2020年にコロナ禍での在宅勤務をきっかけに、半年間の2拠点生活を経て、東京から軽井沢に移住。 現在は東京の会社で働きつつ、2018年生まれと2023年生まれの子どもたちと家族4人で軽井沢に住んでいます。 移住後にスパイスカレーにはまり、週3でカレーを作って食べてます。最近はサンバルとラッサムがお気に入り。 |
(2024年9月 軽井沢「番匠邸」にて)
ジャイサルメールのカレー
(清水宣晶:) 今作っているのは、何カレーなんでしょう?(番匠健太:) ブロッコリーとチキンのカレーです。

最初に油とシナモンとカルダモンとクローブを入れて、テンパリングって言うんですけど、油に香りを移すんです。
テンパリング。
その言葉、(カレー屋ヒゲめがねの)豊田さんからも聞いた気がする。
お米も、ちょっと変わってますね。
これは、インドのバスマティライスです。

インドのお米。
amazonで普通に買えるんですごくいいです。

今も週3、4回とかカレーですか?
最近は外出したりしてることが多いんで、そんなに作ってないです。
9月も半分ぐらいマレーシアにいたので、その間ずっと作れてなくて。で、帰ってきて2日目ぐらいに早速作って。
なんか、これが、ふるさとの味みたいな。
ぶはははは!
日本に帰ってきて、ふるさとの味がインドカレーなのはすごい。
食材はもう、スパイスも何も、一応日本で揃うんですか?
うん、スーパーと、amazonで揃います。
使ってるのはギャバンとかが多い。
ハウスのスパイスですね。
そういえばたしか、豊田さんもツルヤで大体揃うって言ってたなあ。
そう、意外と。
でも、やっぱりメーカーによって全然違います。
スパイスも、インド人が個人で輸入してるようなのは、香りが強いものが多くて。
ギャバンとかだと、殺菌もすごいちゃんとするんですよ。
なるほど。
問題が起きないようにしっかりと。
だからその分、香りも結構飛んじゃってて。
殺菌とかをしっかりしない物だと、香りは強いけど、たまにカビ生えてたりとかするらしくて。
お店とかで、クオリティを一定に保ちたい人は、大手が扱ってる、ギャバンみたいなスパイスを使う人が多いみたいです。

なるほどなるほど。
いや、このカレー、ほんとに美味しい。
作り始めたのはいつ頃から?
始めたのは、引っ越してちょっとしてからなんで、2021年の春です。
最初の頃は多分そこまで頻繁には作ってなくて、週1とかだったんですけど、育休を取ったりリモートワークとかで、家にいる時間が長くなったから、作ってみようかっていう。
最初は、なにかのレシピを本で読んで?
「東京カリ〜番長」の水野さんの本が一番最初です。
豊田さんが、佐久穂町に水野さんを呼んで、「カレーの学校」っていうのをやったんですけど、それに去年参加して。

土日の2日間、朝から晩までみっちりカレーの話ばっかりするみたいな会で、それもあって、水野さんが自分にとってはカレーの先生みたいな感覚あります。
水野さんのレシピには、カレーが何十種類もあるわけですか?
そうですね、この本だけで20種類ちょっとぐらい。
もともと、番匠さんがカレーという食べ物が好きなのは、インドに旅行に行ったときに食べたのがきっかけだった?
もしかしたら、そうかもしれない。
大学の時の夏休みに、全部で3週間ぐらい、デリーから西の端のジャイサルメールまで移動して、そこからちょっとずつ町を巡りながら、東の端のコルカタまでインドを横断して、バングラデシュに抜けたんですけど。
その時はカレーを食べることが多かったから、多分その時に美味しいって思ったのは、なんかベースとしてあると思います。
ものすごく美味しかったカレーが一つあって、印象に残ってるんです。
それを、そのうち再現してみたいなっていうのはあったりしますね。
それはどこで食べたカレー?
ジャイサルメールっていうパキスタンとの国境に近い町で、砂漠の中に、お城みたいな町があるようなところで。
へええ。
行ったことないなあ。
こんな感じです。

うわー!
これは美しい。
こういう景色を見ながら食べたカレーで、トマトが丸ごと大きいのが入ってて。
で、その中にチーズが入ってたんですよね。
それがなんか、すごい美味しかったっていうのは、今振り返ると印象に残ってます。
インドだと、「これがインドカレー」っていうのはなくて、地方によって全然味違うわけでしょう。
そうですね。
「インド行ってカレーの修行したい」って友達に言ったら、「それ、どこ行くかによって全然違うから、まずそれ決めなあかんのちゃう?」みたいに言われて。

なるほど、たしかに。
この前、ラダックに行った時に、デリーで料理教室行ったんですけど、それはやっぱり北インド寄りで、チャパティとかがあるやつで。
でも、南の方行くと、魚とかになるので、そっちのを学ぼうと思うと、南に行かないといけない。
そうか。
日本人がイメージするカレーって、だいたいインドの北の方でしょう。
日本でインドの人がやってるカレー屋はバターチキンが多いけど、あれは北の方のカレーですね。
僕、大学生の時にインド行ったことがあるんだけど、お腹こわすのが怖くて、カレーも避けて、ひたすら、よく焼いたナンばっかり食べてました。
いや、でもその方が絶対、観光は楽しめます。
僕も、基本はちゃんとした店で食べるようにして、露店とかでは全然食べなかったですね。特にジュースとか。
ガンジス川も入ったんですけど、インドではお腹壊さずに乗り切りました。
海外でお腹壊すと大変ですよね。
でも最後、バングラデシュ行った時に、もうすぐ日本に帰るからいいやって思って、いろんなもの食べてたら、空港で発熱。
ええええ!?
飛行機乗れた?
一応乗れましたね。
でも、すごいきつくて。
大学生の頃だったんで、格安の航空券を買ってて、中国で3回ぐらい乗り換えるんですよ。
だから、成田に着くまでに24時間ぐらいかかる。
飛行機の中で、すごい辛かったんですけど、24時間あったから、だいぶ落ち着いてくれたみたいで、日本で入国する時は、なんとかセーフだった。
そうか、逆に。
成田で引っ掛かったら最悪だから。

そう、成田に1週間足止めとかありそうで。
まあ、下痢よりは発熱のほうがマシなのかな。
たしかに、飛行機で下痢だったらどうしようもないです。
想像しただけで厳しいわ・・。
そんな感じで、カレーもインドがきっかけでしたけど、写真も、旅行の中で大量に撮るっていう経験は、そのインドの時が初めてだったんじゃないかなっていう気がします。
キューバにハマってた
番匠さん、初海外はいつだったんですか?
海外は多分小2とかで、グアム。
いわゆる、ファミリー旅行みたいな。
そうです、そうです。
カナダとかシンガポールとか、家族で行きやすいところ。
インドとかに旅行に行くようなタイプの家族じゃなかったので。
じゃあ、インドとかに行くようになったのは、どういうところから?
大学の時に、東南アジアで、現地の病院や孤児院を巡るようなスタディツアーがあって、大学生2〜30人で、2週間ぐらいベトナムとカンボジアに行ったのが最初で。
それで面白いなと思い始めたのがきっかけだと思います。
何か番匠さんの興味をひくものがあったんですね。
やっぱり、日本と全然違うじゃないですか。
そのギャップのでかさがすごいなと思ったし、今でも、いろんな意味で日本の環境とのギャップが大きいところの方が面白いって感じるんだと思います。
そのスタディーツアーの後に、一人旅に行ったんですか。
スタディツアーには、1回目は参加者で、2回目は引率として行って。
その翌年に、インドに一人で行ったって感じです。
初の一人旅で、いきなりインド!?
そうですね。
当時、スタディツアーに一緒に行ってた友達に、インドに行ってる人がかなり多くて、「いいよ」「行ってみなよ」って聞いてたんで、その影響はあると思いますね。

インドに限らないんですけど、休学して世界一周してる人とかも、ツアーの時の友達で何人かいて、なんか、そういうのもいいなと。
結局、そこまではせずに、インドに3週間で終わったんですけど。
バックパックで安宿に泊まる、みたいな旅でしたか?
コルカタで泊まった宿は、1泊150円ぐらいで、トイレ、シャワーは共用で、部屋にはベッドだけあるみたいな。
でも、その150円のところは、今考えると、シングルルームでしたね。
そのインド旅の後には、いろんな国に行きましたか?
大学卒業してから4年ぐらいで結婚したんで、意外と行けてなくて、卒業旅行でアメリカ行ったのと、キューバ、ラオス、ぐらいですね。
お子さんが生まれてからも、何回か行ってるでしょう?
子どもがいると、やっぱり行き先が全然違ってくるんです。
インドとかは行けないんで、グアム、ハワイ、シンガポール、オーストラリア、みたいに子供も楽しめる場所。
じゃあ、この前行ったインドが、久しぶりにファミリー向けじゃないところですか。
そうですね、一人旅は5年ぶり。
5年前は、育休後に、一人旅もやっぱりしたいよねって話をして。
妻がそういうの、すごく協力的で、「行ってきていいよ」って言ってくれる人なので、じゃあ1週間お願いしますって言って、キューバに行きましたね。
それが2回目のキューバです。
キューバは面白そうだなあ。
当時、すごいキューバにハマっていて。
僕、「凝り性で飽き性」みたいなところがあって、一時的なブームでいろんなものに手を出してはやめて、その結果残ったのが、カメラとカレー。
その頃はすごいキューバにハマったから、キューバの本も多分上に2〜30冊あったし、1年ぐらい葉巻めっちゃ吸ってた。

ぶははははは!
形から入ってるなあ。
東京のシガーバーにあちこち行ったり、葉巻を買い込んで家で吸ったりとかしてて。
キューバにハマるって面白い。
その、2回目にキューバ行った時の写真がフォトコンテストで入賞したんです。
ただ楽しいから写真を撮るだけじゃなくて、いわゆる作品撮りみたいなことを意識し始めた最初だったんで、それは大きなきっかけだったと思います。
やっぱり、キューバでしか撮れない写真あるでしょう。
そうですね、キューバ独特の空気ありますね。
それは行ってハマったの?
ハマってから行ったの?
最初に行ったのが2016年ぐらいで、一人暮らししてた頃なんですけど。
『セブンデイズインハバナ』っていう、キューバを舞台にした映画があって、オムニバス形式で、月曜日から日曜日までの各曜日を7人の監督が撮る、っていうコンセプトなんです。
その中の、『ジャムセッション』っていうタイトルの作品で、観光客がハバナに行ってタクシーに乗せてもらうんですけど、そのタクシーの運転手のおっちゃんが、夜になったらトランペット吹くんです。
このおっちゃんすげえかっこいいと思って、それからトランペット始めたんですよ。
(笑)影響受けやすすぎる!
基本、すぐ感化されるんで・・。
一緒にタクシードライバーも始めたらよかったんじゃない?
それもやりたかったんですけど、会社が副業禁止やったんで。
当時、鶴見に住んでたんで、横浜のヤマハに通ってトランペットを習ったんです。
それも、3年ぐらいやって、引っ越すタイミングで辞めちゃったんですけど。
手を出したけどやめちゃったものの1つですね。
それは残らなかった。

その、トランペット吹いてるおっちゃんがかっこよくて、現地にも行ってみたいなと思ったのが、キューバに行ったきっかけですね。
だから、その時点では、キューバにハマってるっていうほどじゃなかったけれど、行ってから、なんか面白くて。
当時はまだフィデル・カストロが存命の頃だったんで、50年代頃の革命の本とか、ゲバラの映画を見たりとか。
『モーターサイクルダイアリーズ』って映画あったね。
ゲバラが医大生時代に南米を旅してるときの映画。
そうそう、その映画は高校の頃に見てた記憶があって、その頃はハマらなかったけど、なんとなく残ってたっていうのはあったかもしれない。
で、キューバから帰ってきた後、現地の歴史の本とか、日本人のいろんな人が撮ったキューバの写真集とか、そういうのを買い集めてって感じですね。
たしかにキューバは面白そうだなあ。
他の国と違う歴史を歩んできたから、キューバにしかない、世界のどこにもないユニークなものは結構ありそう。
そう、東南アジアとかもすごい好きで面白いですけど、どこかの国で見た景色とに似てるなって思うところはやっぱりありますよね。
キューバには、どのぐらい滞在した?
1回目は一応車借りて、島を半周ぐらいぐるっと回ったんですけど。
2回目は写真撮りたかったんで、1週間ぐらい、ずっとハバナって感じです。
ハバナ1箇所だけでそんなに長いこと。
僕はそういう旅の仕方はあんまりしなくて、行ったらもう、できるだけいろんな場所を回りたいって思うから、1週間同じ場所にいるとかはほぼないなあ。
僕も多分、写真を撮ってなかったら、ちょっとでも色々回りたいって考えると思います。
でも、写真を撮ろうと思うと、1日じゃやっぱ撮りきれないというか、見逃すものがすごく多い。
面白い!
それはなんだろう。
同じ場所でも、時間帯とか天気によって変わるから?
そうですね。
とくに、ハバナのマレコン通りっていう、海に面した通りがあるんですけど、そこは夕日がすごい綺麗なんですよね。
だから、時間によって、全然見え方が違ったりとかするんで。

で、夜になって涼しくなってきたら、どこからともなくテーブルを出してきて、ドミノでおっちゃんたちが遊び始める。
なるほどなあ。
それはたしかに。
じゃあ、町によって、どの時間帯に居るのがベストかを考えて、行く場所と時間を考えてるのかな。
そうですね、なんとなく。
ただ、全部を計画しようとは思ってなくて、半分ぐらいはその場の成り行きでもいいなと。
インド行った時も、主に撮ってたのがヤギなんですけど、彼らはいつ何してるかわからない。
動物相手だからね。
朝9時ぐらいに、ヤギを飼ってる家を訪問したら、1時間ぐらい前に仔ヤギが生まれたって聞いて、もうちょっと早く着いてれば生まれるとこ見れたのにな、っていうこともありました。
うわー、それは惜しかったなあ。
そういう瞬間を撮ろうと思ったら、やっぱり長いこと腰を据える覚悟が要りますね。
インドとかだと、ここに行ったらいいものが撮れそうだなっていうのは、どうやって事前にわかるの?
ラダックの場合、いいものが撮れるっていう確信は、行く前はとくになかったです。
ラダックは、チベット仏教がまず一番有名で、あと、ヤクがいることで。
おお、ヤク。
現地の旅行会社にヤクがいる場所を聞いたら、今の時期は人が世話してるわけじゃなくて、どっかの谷に集められて、そこで勝手に草をはんでる、って話を聞いて。
ヤクも見てみたいけど、人が世話をしてる姿の方が人の生活に繋がってるので面白いなと。
それは、たしかにそう思う。
そういう話をしたら、それだったらヤギの方がいいと思うよって教えてもらって、それでヤギを撮りに行くことにしたんです。
ヤギの方が、乳を絞ったりとかするから生活に近いのかな。
そう、あと、行ったのが、ちょうどパシュミナの毛を刈る時期だったんで、その時にしか見られない姿が見られるっていうのもあります。
面白いなあ。
そういう、一期一会のタイミングが旅の写真の面白さだね。
写真にしかできないこと
本棚、写真の本ばっかりだ。
そうですね。
ここらへんはもう、写真関係で埋まっちゃって。
で、こっちが美術系で、ここにちょっとカレーがあるって感じですね。
写真そのものってよりも、なんか美術とかアートとか、もうちょっと広いバックグラウンドに興味あるんですかね。
もとから興味があったわけじゃないんですけど、写真をやっていくなら美術も理解しておいた方がいいよねっていうのがあって、美術検定を去年受けて、2級を取ったんです。
勉強していくと、やっぱり面白いんで、その関連書とかも読みたい、ってなっていく。
なるほど、なるほど。
あと、妻の父親が陶芸家で、母親が織物を作る人で。
家族みんな、すごいアートが好きなんですよ。
結婚してから、美術館とかアートフェスとか、いろんなところに連れてってもらって。
僕はすごい影響受けやすいんで、それでアートが好きになっていったっていうのはありますね。
影響を受けることで、自分の世界が広がっていくのはいいね。

写真を始めたのはどういうきっかけで?
鶴見に住んでた時に、綱島にあるカレー屋さんの店長が写真を撮る人で、そこにたまたま遊びに行った時に、写真の展示があって。
それが、すごい面白かったのが、自分が写真をやっていくきっかけの1つではありました。
そこに飾られてた写真を見たんですか?
ギャラリーみたいな形でも店内を使ってて、1週間とかの期間貸しでやってる写真展があったんです。
じゃあ、たまたま番匠さんが行った時に、その人の写真の展示会をやってる期間だったっていう。
そうですね。
ミャンマーの写真だったんですけど、それがすごい良くて。
その人がじゃあ、写真を始めたきっかけなんですか。
そういえば、そうかもしれない。
その写真に出会ってなかったら、今みたいに撮ってなかったと思います。
なんだろうそれは。
見た感じが、普通の写真と違ったんですかね。

その頃は自分も、海外に行って写真を撮っても、いわゆる旅行写真みたいな、自分が見た景色を撮ってたんですけど、そうじゃない写真だなと思って。
旅行で見たものよりももっと、現地の人たちの中に入っている感じなんです。
キレイとかじゃなくて、生活とか物語が見えるみたいな。
そうですね。
もちろんキレイでもあったんですけど。
こういう写真を撮れると面白いな、って思いました。
風景は、誰でもそこに行けばまあまあ似たものは撮れますけど。
でもそれって結局、googleで検索すれば出てくるんで。
いや、そうなんですよね。
自分が撮らなくても、だれか他の人が撮ってるから。
ラダックに行った時の写真で、お母さんが赤ちゃんを抱っこしてくれた瞬間とか、そういうのって、この時しかないものでしょう。

なんか、アートとかの勉強もすると、写真にしかできないことって何なの?みたいな話、よくあるじゃないですか。
その、撮ったその時に、写っている被写体が実際に存在していた、こういう瞬間があった、っていうのが写真の面白さの1つだなっていう気がしてて。
で、それってやっぱり、風景とかよりも、こういう人の生活の中に感じるんです。
(2024年9月 軽井沢「番匠邸」にて)